From:松本泰二
冷えきった市場はなかなか好転の兆しを見せず、大半のビジネスマンは苦闘を続けています。ブレイクスルーするべく、その糸口を見つけようと日夜努力していることでしょう。
こんなときこそ、ある意味大きなビジネスチャンスといえるのですが、ブレスクスルーのヒントは意外にも異業種にあることに気づかない人が多いものです。
常識がカセになる
ある日、それまでにはなかった新しいビジネスモデルが誕生したとしましょう。すばらしい成果を上げ、その時点では誰もが疑わないベストのモデルであったことからそれは同じ業界内で広まって、やがて定着します。その業界ではそれが常識となるのです。当たり前のことであり、なんの疑問も抱きません。
ところが、やがてそれは手カセ、足カセとなり、次なる飛躍が難しくなる傾向があります。常識にとらわれるあまり新しい発想ができなくなるのです。これはどのような業界にも見られる風潮です。
同一業種の成功例は参考にならない
膠着した現状を打破するため、そのヒントを同業他社に習うことはよくあります。成功例は瞬く間に広まり(失敗例も同様ですが)、可能ならば極力早い時点で導入しようとします。しかし、往々にしてそれはいい結果を生みません。なぜなら、他社も導入するからです。みんながみんな似たような形態のモデルを進めることになり、同質化は免れません。
つい先年のことですが、乗用車業界では一斉に燃費アップを目指しました。ガソリン料金値上げへの対策と資源保護を目的としたこの流れは消費者の大きな賛同を得ました。ハイブリッド車が人気を集めたことは記憶に新しいでしょう。
しかし、自動車メーカー各社が同じ方向を目指したため、突出することはできませんでした。
他のメーカーが燃費をアップさせた中、自社だけが従来の燃費にとどまっていてはマイナス材料ですから、追随せざるを得なかったという面もあったことは否定できません。
参考モデルは他の業界にある
実は、ブレイクスルーのヒントは同一業種ではなく、他の業界にあるのです。状況が違うのだから参考にならないと斬って捨てるのは、それをアレンジする能力が自分にはない、または参考にしたくないという意志の表れといえるかもしれません。
今でこそホームページやメールマガジンは珍しくない販促の一環です。しかし、それらが登場した初期の段階ではどうだったでしょう? インターネットはおろか、パソコンでさえ普及率は低く、ホームページで自社商品や店舗ををPRすることなど誰も考えつきませんでした。ちなみに、わが国初のホームページを公開したのは文部省の高エネルギー物理学研究所計算科学センターで、1992年のことだったそうです。
ホームページというのは最先端の科学に携わる人だけのものという認識だったでしょうから、時代は下ってもそれをビジネスに導入した担当者の発想には頭が下がります。
自社のビジネスにどう生かすか
同じ業界でなら新しいモデルは容易に導入することができます。が、異業種ではそうはいきません。ここに大きな問題があります。
Aというモデルが実績をアップさせたとしましょう。そういう情報を知り得たとしても、Aというモデルはその業種だから可能だったのであり、状況の異なる自社では通用しないと担当者はしばしば判断してしまいがちなのです。理由は、表層しか見ていないからです。
現在、ポイントカードを作成している小売店は非常にたくさんあります。商品を購入するたびに金額に応じたポイントを記録し、一定金額になれば値引きや商品券、ノベルティをプレゼントするというものです。このシステムは大きな効果を上げ、たくさんの小売店が採用しています。
では、これを家具の販売店が導入しようとしたらどうでしょうか?
ポイントシステムは金額が低く、その代わり購入頻度が高い商品だから効果があるのであって、高額商品が多い家具販売店には適していないと判断すればそのまま見送られてしまうでしょう。
しかし、これを一歩進めて、ポイントカードを作成する際に家族構成がわかれば、新入学用の机やランドセル、婚礼家具、高齢者用家具の販促に結びつけるのは不可能ではありません。精度の高い顧客リストができればDMの効果も期待できるものとなるでしょう。