他社との差別化に悩んでいる人へ~大切なのはどう戦略を組むか~

起業アイデア

From:松本泰二

新しくビジネスを展開した際に、競合他社がどのようなビジネスに取り組んで利益を生み出しているのかは気になるところですよね。

「あそこはこんなプランを立てて、実行している」
「あの会社は自社にはない面白いアイテムを開発している」
など、ビジネスをする中でそうした経験は多いものでしょう。

 

「隣の芝生は青く見える」と言いますが、やはり他社が新しいことや風変わりなことをやっていると、こちらも独自のことをしなくてはいけないという気持ちになるものです。そこでもし自社の売上が落ちているとなれば、不安や焦りも出てきてしまうかもしれません。

 

どうすれば他社と明確な差別化を図ることができ、そして自社の売上につなげることができるのか。大切なのは、差別化をする上できちんとビジネス戦略を練ることです。しっかりと目的に沿って差別化をすれば、自社のブランドを一挙に高めることができ、利益に直結していくことでしょう。

 

そこで今回は、差別化戦略で悩むビジネスパーソンのために、この記事を読んですぐにでも差別化のために動き出せるようなアドバイスを紹介していきたいと思います。

まずは【差別化戦略を練る前に知っておきたいこと】を話した上で、【具体的な差別化戦略】を話していきましょう。ビジネス戦略を考える上では、やはり土台をしっかりと固めることが非常に重要ですからね。ぜひ最初から最後まで目を通してもらえればと思います!

 

【差別化戦略を練る前に知っておきたいこと】

《差別化とは?》

いきなりの問いかけに拍子抜けしてしまったかもしれませんが、これから話をしていく中で差別化という概念をしっかりと共有するのはとても大切なこと。ここが少しでもズレていると、これから私が紹介することも伝わりづらくなってしまいますからね。

 

さて差別化というのは読んで字のごとく、自分と相手とのはっきりとした違いをつけることを言います。どんな場面においても差別化という言葉そのものは使われると思いますが、ビジネスにおいては特にこの“はっきりとした違い”というのが鍵を握ります。つまり自分だけではなく、周りの人に自分と相手との違いがわかってもらえているかどうかが重要になってくるのです。

プライベートなど利益を求めないものであれば、周りの人がその違いにわからずともそれほど影響はありません。
髪を切ったことに気づいてもらえなかったとしても、その場ではもしかしたら寂しい思いをするかもしれませんが、それをずっと引きずることはありませんよね。

 

しかしビジネスにおいては、気づいてもらえないというのは致命傷となります。
この差別化、すなわち“はっきりとした違い”を提供できるか否かで、会社が続くかそうでないかが決まるといっても過言ではありません。

 

《なぜ差別化(はっきりとした違い)が肝となるのか》

さて差別化について共有ができたところで、次になぜビジネスにおいて差別化(はっきりとした違い)が鍵を握るのか説明していきましょう。

そもそもビジネスは、いかに社会に貢献して利益を生み出すかというもの。社会貢献のために物やサービスなどを提供し、その対価を利益として得続けることで存続できるのです。

 

そのためビジネスを展開する会社は、日夜さまざまな物やサービスを生み出しては提供、生み出しては提供を繰り返しています。とはいえ今は物もサービスも実に多種多様ですので、被ることもしばしばあるでしょう。全く同じ商品とまではいかなくても、似たような商品はたくさん世の中に出回っていますからね。

 

「A社もB社も同じ(似たような)商品を扱っている」
もしこのような場合が実際に起きていた場合、どんなことが起こるでしょうか。同じ商品をどちらの会社も扱っているのであれば、当然顧客は安い価格で販売しているほうに流れていくでしょう。

 

特に今は不況の時代と言われていますので、A社120円、B社150円だった場合は、A社の商品を買う人の割合のほうが自然と多くなると思います。主婦の方が各スーパーのチラシを見比べて、10円でも20円でも安ければ普段は行かないスーパーであっても、そこに行って買うという話を耳にすることもありますよね。

 

こうして同じ商品で価格が異なり、顧客の流れに露骨な違いが出ていると、さらにこういったことも起こるでしょう。
「A社はあの価格で顧客を獲得しているのか。だったらうち(B社)も会社存続のために黙っているわけにはいかない。A社よりも顧客が求めやすい100円にしよう」と。

みるみるうちにB社に顧客が流れていく様子を見たA社は、そのB社の値下げした価格に慌ててより安い80円で商品を提供するようになりました。

その様子を見たB社は75円に…と激しい価格競争が勃発。
そして結果的に赤字覚悟まで価格を削って、A社B社ともに倒産してしまいました。
極端な例ではありますが、こういったケースも実は少なくありません。

 

A社とB社が同じ価格にすれば、このようなことが起きなかったもしれません。ただそれが実現されたとしても、資本主義社会に慣れている私たちにとって、同じ商品を同じ価格で売ると何か損した気分を持つものですし、相手が裏切るのではないかとどうしても考えてしまうものです。

 

こういった状態をまさに〈囚人のジレンマ〉というのですが、その状態に陥ってしまう会社は驚くほどあるようです。

「A社はこんな商品があるけれど、B社の商品にはまた違った違いがある」
だからこそ、このような場合になることが望ましいのです。

 

もしこのようにはっきりとした商品の違いが顧客に認識されているのであれば、顧客を取り合うことなくA社もB社もお互いにウィンウィンな関係を築くことができるでしょう。顧客も満足して対価を払い続けていきますし、これほどみんなが喜ぶことはないと言えます。

自社が生き残るためにも、そして他社との関係を良好なものにしていくためにも、差別化はビジネスの中でもかなり重要なウェイトを占めることが、わかってもらえたでしょうか。

 

《結局、差別化戦略って何?》

とはいえ、差別化が良いからと言って他社とははっきりと異なる完全なオリジナル商品を生み出して利益を得ることは、それはそれでとても難しいものです。なぜなら顧客が求めているかどうかがわかりづらいからです。

どんなに他社にはない物やサービスを生み出したとしても、それが顧客に受けなければ意味がありません。差別化かどころか利益を得ることができず、会社は倒産の道をたどるでしょう。

 

やはり既存の物やサービスには、既存になれるだけ顧客に受け入れられている理由があるのです。その理由に基づきながら、その物やサービスとははっきりと違うものを見せることができれば、会社にとって強みとなります。

「これまでものを受け継ぎながら、それとは違う物やサービス」
こうして言葉にするのは簡単ですが、似ているけど似ていないということですから、実際にやるのは非常に難しいものです。

 

だからこそ各社ともに差別化の戦略を練り、どうすれば差別化を成功させることができるのか、日々頭を抱えながら絞り出すのに精を出しているのでしょう。

差別化戦略は、言葉どおりに訳せば「はっきりとした違いを顧客に認識してもらうための作戦」です。

 

ただその根本にあるのは、どれだけ顧客により良い価値を与えることができるのか、それを考えることです。顧客を満足させる原因を探し出していくためには、その顧客がなぜその物やサービスに対価を払おうと思ったのかを考えることが必要不可欠になってきます。

 

なぜ対価を払ってまで“その店”で物を購入したのか、“その店”でサービスを受けたのか。
こう考えるとすごく難しく見えますが、要は自分はなぜ数ある本屋の中で、駅前にあるその本屋に行ったのかを考えれば良いのです。

駅前にあって便利だからでしょうか。
欲しい本がいつも置いてあるからでしょうか。
店員さんの態度が良いからでしょうか。

本屋でなくとも何気なく行っているお店や、何となく継続的に受けているサービスは誰もが1つや2つはあるでしょう。

 

それらに対価を払っているのであれば、必ず理由があるはずです。そしてその理由こそが、競合他社とのはっきりとした違いと言えます。差別化戦略と聞くとかなり難しく、複雑に考えてしまうものですからね。

 

深く考えるあまりに、根本的な顧客第一であるということを見落としてしまう人も少なくないのです。差別化戦略を練る前に、これをしっかりと頭にインプットしてもらえればと思います。

 

【具体的な差別化戦略】

それではいよいよ実際にどのような差別化戦略があるのか話していきましょう。

まず差別化戦略は、何を差別化するかによって具体的に取るべき行動が大きく変わってくるので、その差別化の対象が決まらないとスムーズに差別化戦略を開始することは難しいものです。

とはいえ何を差別化するかは人によってさまざま。
何を参考にすれば良いのか難しいところですよね。

 

私がおすすめするのは、マーケティング・ミックスに必要な顧客側の要素を差別化戦略の対象とすることです。

そもそも差別化は、顧客のニーズに合わせて物やサービスなどを提供する活動のことを指すマーケティング戦略の一つですからね。そのマーケティングの目的を達成するために必要な4つの要素は、すなわち差別化戦略の根本と言えるのです。

 

つまり、差別化戦略の対象として《顧客にとっての価値》《価格》《利便性》《情報伝達性》の観点から見れば、体系的にわかりやすく差別化戦略を把握することができるだけではなく、他社との差別化を図りやすいですし、顧客も満足させることができるヒントも掴みやすいのです。

具体例を交えながら、それぞれをより詳しく話していきますので、自分の会社であれば何が一番戦略として取り込みやすいのかを判断してもらえたらと思います!

 

《マーケティング・ミックスから見た差別化戦略》

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①顧客にとっての価値を差別化戦略の対象にする

差別化戦略の対象となる顧客にとっての価値は、2つあります。

1つ目は「その顧客がいかに自分だけに特別なサービスを受けているか」というものです。先程の本屋に例えるならば、自分の欲しい本を自分のためだけに注文してくれるかどうか、それが他店との差別化の一つになります。

決して何かVIP待遇をする必要はありません。
自分の思いにちゃんと答えてくれると顧客に思わせされるかどうかが鍵なのです。

 

そういった意味ではレジでの気持ちの良い接客をして顧客を迎え入れたり、通販などで購入してくれた人にアフターフォローしたりすることも、立派な差別化戦略ということができるでしょう。

こうした一人ひとりの顧客のニーズに合わせることを続けていけば、あの店は何か違うと思わせられ、競合他社との差別化につながると言えます。

 

また、顧客にとっての価値の2つ目は「その顧客がいかに提供する物やサービスに価値を見出すか」というものです。自社で開発したものが他社のものよりも優れたものであれば、顧客はそこに価値を見出して、他社よりこちらを購入してくれたり、利用してくれたりするでしょう。

セブンイレブンのおにぎりよりファミリーマートのおにぎりのほうが美味しいとなれば、ファミリーマートのおにぎりを買いますよね。それはそのおにぎりの美味しさ(価値)をあなたが理解しているからです。

 

加えて提供する物やサービスに付加価値を投入することで、それだけで差別化を図ることができます。あなたがTカードしか持っていなく、ファミリーマートであればT-POINTがたまるとなれば、セブンイレブンよりもファミリーマートを利用する回数のほうが多くなるでしょう。

 

②価格を差別化戦略の対象にする

差別化をしないと価格競争が行われ、〈囚人のジレンマ〉に陥ってしまい、共倒れになってしまうという話をさきほどしましたね?なぜかと言えば、差別化において重要な“はっきりとした違い”がないためでした。

ですので、もし差別化戦略の対象として価格を選んだ場合は、価格の違いをはっきりと顧客に理解してもらう必要があります。常に低価格をキープするのではなく、普段はこの料金だけど期間限定で割引をするなど、価格にメリハリをつければそれだけで他社との差別化を図ることができるでしょう。マクドナルドのクーポンや、ドミノ・ピザの水曜日限定割引などが良い例です。

 

また脱毛サロンなど何度も通う必要があるところが、初回だけは破格の割引を行い顧客に来てもらったりするのも、価格を対象にした差別化戦略の一つですね。

少し冒険的ではありますが、あえて安くするのではなく一切値を落とさないことで、顧客の満足度を高めるという方法もあります。ブランド品などもある意味そうした差別化戦略の一つと言えるでしょう。

 

③利便性を差別化戦略の対象にする

もし仮に似たような商品、似たような満足度を得られるのであれば、人は便利な方を選ぶものです。街へと出かければ、ほぼ100%見かけるといっても過言ではないコンビニエンスストアは、もはやなくてはならない存在になってきましたね。

 

ネットで物を購入するのが当たり前になってきたのも、店舗を訪れるよりもはるかに簡単に欲しいものが手に入るためです。スマートフォンの普及もあって、24時間365日自分のタイミングで利用できるインターネットショップ市場はこれからも拡大していくことでしょう。

今はそうした通販事業にいかに参入できるかではなく、そうした通販事業の利便性に対してどう差別化を図ることができるのか、が差別化戦略では重要にもなってきています。

 

④情報伝達性を差別化戦略の対象にする

例えば同じ商品を扱う店でも、知らない情報を積極的に教えることができれば差別化を図ることができます。カーテンを買いにいったときに、実際に窓枠があってカーテンレールにつけたときに部屋の雰囲気がどのようになるのかわかる店と、きっちりと袋に入ったまま売られているだけの店だったら、どっちのほうが買いやすいでしょうか。

 

カーテンならまだしも、家具や家電などはものによっては決して安くはないですし、買ったあとのことが簡単に想像することができれば、安心して対価を払えますよね。

同じ物やサービスを提供していたとしても、きちんと顧客に紹介することができ、その物やサービスの情報を伝えることもまた差別化戦略の一つです。

 

情報伝達性を差別化戦略の対象にするということは、自社の商品の魅力がどのくらい顧客に伝わりやすいのかを考えること。
・その物・サービスの名前はわかりやすいか
・その物・サービスのコピーにはしっかりとキャッチ力があるか
・その物・サービスのデザインは魅力的か
こういった点を考えていく必要があるでしょう。

 

《差別化戦略を具体的に行っていく上で気をつけてほしいこと》

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さて、差別化戦略の対象をマーケティング・ミックスの観点から見てきましたが、もちろんほんの一例であることを心に留めておいてください。また上記の差別化戦略の対象は単独で行ってもあまり効果を発揮しないということも忘れないようにしてもらえればと思います。

特に《価格》は手軽に調整が効きやすいながらも差別化に絶大な効果を持っているので、多くのビジネスで取り入れられやすいものです。ですので、価格“だけ”で差別化していこうとしても、それこそ価格競争の餌食になりかねません。

 

またどんなに良い物やサービスだったとしても、まるっきり知名度がなければ差別化すらもすることができないので、効果的に顧客に情報伝達していく必要もあるでしょう。

 

それぞれの特徴を知った上で、自分の今のビジネスにはどれとどれで差別化を図ることができるのかをきっちりと見極めるのが、差別化戦略を練る上ではとても重要です。

見極めを誤らないためにも、差別化戦略を行う前に、自社の強みと弱みをしっかりと把握しながら、顧客には自社がどう見られているのかを考えると、自ずと取るべき行動ができると思います。

 

【差別化戦略・まとめ】《人をいかに感動させて気持ちをのせられるか》

人は意外と論理的に見えて、そうではありません。
むしろ感情的に行動する生き物と良く言われています。

だからこそ人の気持ちをどうコントロールし、行動に繋げられるか。
それを意識するのかが、ビジネスの根幹にあるでしょう。

 

ご当地キャラがパッケージにプリントされた商品を、あなたも見たことがあるのではないでしょうか。TVなどでそのご当地キャラがどんなキャラなのか知っているだけで、その商品が特別な物に見えたりしますよね。

中に入っているのは、普段からよく目にしているお菓子のはずなのに、なぜか欲しくなってしまう…
そんな経験をした人もこの記事を読んでいる人の中にはいるでしょう。

 

あるいはTV通販などで出演者が大げさに驚いてたり、喜んだりするのを見たことがあると思います。
たまに「本当なのかな…?」と思うほどの演出もありますが、知っているタレントが出ているとなんとなく欲しくなるときもありますよね。

 

このように感情に訴えながら物やサービスを提供することで、人は驚くほど簡単にそこに対価を投じます。

感動を促し、気持ちをのせるためには、いかに“矛盾を感じさせないか”がとても重要です。
一度「あれ、なんか違う」と思わせてしまうと、人は途端に気持ちが冷めてしまうものですからね。

 

「どこで差別化を図るのかではなく、どんな形で差別化を図るのか」。

一つひとつの要素に対して差別化を考えるのではなく、ビジネス全体を通してどう差別化していくのかを考えるようにすると良いでしょう。そのときに初めて自社のオリジナリティが生まれ、人は「この会社は他のところと違う!」と思うようになります。つまり、差別化戦略が成功を迎えるのです。

 

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