「発想力」とは?発想力を鍛えるにはどうすればよいでしょうか?

起業アイデア

From:松本泰二

仕事で新しい企画や商品を開発するには、「発想力」が求められます。今までの物まねではなく、何らかの斬新なアイデアやオリジナリティーを発揮することが求められます。仕事だけではありません。趣味に熱中したり、遊びに出かけるにしても何をするか、あるいは新しく面白いことはないかと考えるでしょう。

また、主婦が食事を準備するにも、毎日同じメニューでは、飽きられてしまうため頭を悩ましています。我々は、条件反射的にあるいは機械的に何も考えずに動いているわけではないのです。このように、日常生活でも「発想」しているのです。

 

あまり苦労せずにアイデアが浮かぶこともあれば、いくら考えても思いつかなかったりすることもあります。また、次々とユニークなことを考え出す人もいれば、ほとんど代わり映えのしないことしか思いつかなくて苦労している人もいます。

そもそも、「発想力」とは何でしょうか?「発想力」を強くする、鍛えるにはどうすればよいでしょうか?考えてみましょう。

発想力とは?

単純にいえば、発想力とは考える力のようにも思われますが、インターネットでweblio辞書を検索すると、「思いつく能力。さまざまなものを思いつくことができる能力。多くは卓抜なものを考案できる力のこと。」と述べています。単に考えることではなく、何らか意義のあることを含めて考える力になるでしょうか。

もう少し具体的に考えてみましょう。科学や工学の分野の研究や発明は、典型的な発想力の成果といえるでしょう。音楽、美術、小説などの芸術作品も素晴らしい発想力をもって作り上げたものです。また、電球やトランジスターを始めとするさまざまな発明品あるいはテレビゲームやSNS等のITに関連した技術も独自の発想の産物です。

 

発想力は作家、芸術家、研究者や発明家のような特別に才能のある人だけにしかないのでしょうか?

これでは凡人には絶望的ですが、特別な才能をもった人が簡単に発想力を発揮しているわけではないのです。解釈には異論もあるようですが、発明家エジソンは、『天才とは1%のひらめきと99%の努力』という有名な名言を残しています。

アップル創業者のスティーブ・ジョブズは、『よく見ると、一夜にして起こった成功の多くには長い時間が費やされているものだ。』という言葉を残しているそうです。また、直木賞作家の石田衣良氏は、『原稿に行き詰まり、まったく書けないときは「地獄ですよ、吐きそうになる」』といっているそうです。

 

これらの話を聞くと、分野を問わず、大変な苦労・努力を重ねて発想力が発揮されたことがわかります。我々が発想力がないと諦めることなく、トライする意欲を喚起してくれます。

発想力の要因

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なかなか新しいアイデアを発想できなくて苦労するわけですが、その原因、要因を考えてみましょう。

 

◇情報収集

先ず、対象としているものをしっかり把握しているでしょうか?自分の趣味や遊びの場合にはある程度決まっているでしょうが、仕事で新しい企画や商品開発を担当させられた場合には、それに関連した情報や背景の知識が少ないでしょう。また、何のために開発するのか目的などをしっかり把握しているでしょうか?自分が興味をもった趣味にしても案外知らないことも多いと思います。これでは、新しい発想が出るわけがありません。ここで必要となるのが、情報収集です。

 

◇理解して分析 

対象としているものに関連した情報が集めたら、それを理解して分析することが大事です。対象とするものを、じっくり調べることにより、長所・短所などの特徴がわかってくるでしょう。また、見た目に惑わされないで、本質を捉えることが大事です。

 

◇好奇心と感性

対象としているものを分析して特徴を充分に把握したところで、そのままでは、単なるデータに過ぎません。対象とするものに好奇心をもって接し、一般的な特徴やデータを自分の感性で具体的、直接的に捉えるのです。

 

◇評価力と柔軟性

対象としているものを充分に把握し、直接的に捉えたままでは、新たな発想にはつながりません。一旦対象とするものから離れて客観的に批評したり評価したりする必要があります。そのためには、把握した特徴などに囚われず、柔軟に多方面から眺めます。なお、批評家のように欠点を羅列するのではなく、前向きな観点で考えることが大事です。

 

発想力を鍛える5つのポイント

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新たな提案やアイデアの発想を引き出すコツがあるでしょうか?インターネットで「発想力」のキーワードで検索すると、無数というほどのウエブサイトがでてきて、発想力を鍛えるさまざまな方法の説明やセミナーの案内などがあります。

また、アマゾンなどを検索すると数え切れないほどの本が出版されていることがわかります。これら全てに目を通すのは不可能ですが、いくつか眺めてみると、その本質的・基本的なポイントはどこも似たようなことが挙げられており、コンパクトにまとめられます。これらも参考にしながら、考えてみましょう

 

(1)先人のアイデアを生かす、情報をたくさん取り入れる、物まねをする

どんな天才でもまったく0から発想したわけではなく、今まであるものを改良したり作りかえたりすることから始まっています。

例えば、安藤広重などの日本絵画がゴッホ、ロートレックやドガなどの西洋画家に影響を与えたことが知られており、模写した絵もあるそうです。研究においても従来の研究をヒントにして発展させており、研究論文では参考にした資料の出所を明示するのが当たり前です。

また、技能や職人の世界では、先輩や親方の技術を盗み取るといわれています。ただし、物まねといっても、単純にそっくりそのまま同じことを行うのではなく、独自の新たなことが加わっています。日本画の影響を受けた西洋画家も独自の画風を見いだし、伝統的な工芸品も時代に合わせて変化しています。

 

このように、先人のアイデアを生かすためには、元となる情報や知識を蓄えておくことがポイントです。「アイデアは結局、組み合わせと発展(応用)だ」と述べている人もいます。「知識があるほど考えが豊かになる」との考え方で、

本をたくさん読む、たくさんの人から話を聞く、映画を見る、旅行に行く、興味のあることにはとことん熱中する~

等々、いろいろなことが勧められます。

 

普段の生活で、台所用品などで使いにくいと感じたりすることはありませんか?そのとき、ちょっとした工夫で特許を取った主婦などもいます。例えば、肉や野菜を煮ると出てくるアクの上をなでつけるだけで、アクをしっかり取ることができる「アク取りお玉」を発明して商品化されたとのことです。

また、電気製品が重かったり大きくて使いにくかったり、期待した性能でなかった、レストランで料理を注文してから出てくるまで時間がかかった~等々、不満・不便を感じたことがたくさんあると思います。こんな不具合も、10年あるいはそれ以前と較べると驚くほど改良されています。

 

例えば、ある回転寿司店では、インターネットでリアルタイムに混雑具合をチェックでき、席の予約も簡単にできるようになって、店に行ったらすぐに食べられるシステムになっています。病院などでも、以前は診察が終わってから会計が済むまで1時間以上待つこともありましたが、最近はほとんど待つことなく処理されます。

また、検査データや過去の病歴なども診察室でオンラインでチェックされ、診断も速やかに行われるようになりました。ネットワークの発達の恩恵もありますが、お客や利用者の不平・不満に耳を傾けて新たなシステムを発想して改良してきた成果ではないでしょうか。

 

単に不便だなと思ってやり過ごすのでなく、何とか解決できないかと自分の頭の中で考えることです。また、毎日見慣れているとマンネリ化して疑問に思ったことも忘れがちですが、記憶にとどめておくことです。何かのきっかけで新たな発想に結びつくかも知れません。

 

(3)発想を逆にする、異質なものと組み合わせる、普段と別のことをやってみる、柔軟性をもつ

本当は問題があるのに、マンネリ化して疑問にも思わなくなったことを喚起させて、新しいアイデアを見いだそうということです。これまでの認識では間違えているあるいは逆の観点から眺めたところ、思わぬ発想に気づくこともあります。

例えば、ヘンリー・フォードは、製品は動かず労働者が動く自動車組み立て作業を逆転させ、労働者が動かず製品が動く「流れ作業」を考案したとのことです。

 

また、ひと昔前の話になりますが、カセットレコーダーとラジオを組み合わせたラジカセは、当時の若者に大人気でした。その前は、ラジオの音楽番組を録音するときに両方をケーブルでつないでいたのですがスイッチ一つでできるようになったのです。

スマホになると、電話、カメラ、レコーダー、ムービー~など数え切れないほどの機能の組み合わせになります。機能ごとに専用の製品もあるのですが、全部一つに組み合わせただけで、データを相互に遣り取りできるなど、格段に便利になったわけです。

 

通勤や通学の経路を変えてみることを挙げている例もあります。通る道を一本違えただけで近所の雰囲気が変わり、今まで気づかなかった便利な店があったりして、新しい発見もあります。

強制的に普段と別のことを行うことにより、マンネリ化した習慣を変えて新たな視点から考えるきっかけにするのです。この観点からは、ブレーンストーミングに通じる手法といえます。

 

(4)失敗を成功にする、執着心をもって繰り返し挑戦する

失敗したときこそ、その原因や背景を追求すれば、悔しさのために発憤して力が入って潜在能力が引き出され、新しいアイデアが生まれる可能性が高くなります。追い詰められて苦し紛れにしたことが新たな成果を生むこともあります。

「窮鼠猫を噛む」、「火事場の馬鹿力」、「ピンチはチャンス」などの格言がありますが、昔から不具合が生じたときの対処法が認識されていたのでしょう。

 

また、1度や2度失敗しても諦めずに何回も挑戦することです。ノーベル化学賞を受賞された田中耕一氏は、実験で使う物質を間違って混ぜてしまったそうです。そのとき混ぜてしまったものを捨てていたら、ノーベール賞の受賞はなかったかもしれないとのことです。

 

(5)急がば回れ、無用の用

これまで述べてきたこともそうですが、「~を鍛える」と考えると、どうしても力が入り、頑張りすぎることになります。また、早く成果を出そうと焦って効率良くしたいと考えます。

しかし、常にこの調子で取り組んでいたのでは、疲れてしまいます。「急がば回れ」という格言もあります。時たま回り道をしたり休んだりすることも大事です。「自分の頭で考える時間を確保する」といっている人もいます。逆に「考えない時間を作る」といっている人もいます。表現は正反対ですが、趣旨は同じです。

 

「瞑想」ということもあります。目を閉じて深く静かに思いをめぐらしたときに、新しい発想が生まれることがあります。風呂やトイレに入っているときに、ふと、忘れていたことや思わぬことに気づいたという経験をした人もいることと思います。

 

また、「無用の用」という格言もあります。効率を上げようと考えると、どうしても無駄と思われることを捨てることになりますが、そこに素晴らしいネタが入っていることもあります。

 

このたびノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典氏は、受賞が伝えられた際の記者会見で「私がこの研究を始めた時に、オートファジーが必ずがんにつながる、人間寿命の問題につながると確信して始めたわけではありません。」と述べています。 時には成果が見えない、無駄と思われることもやってみてはどうでしょうか?

 

まとめ

発想力を鍛えるために、発想力の要因とポイントを挙げてみました。ここでは、発想力を鍛えるための具体的なトレーニング法や、実践法については述べませんでしたが、詳しく説明したウエブサイトや講師の指導の下にトレーニングを行うセミナーなどもたくさんあるようです。

そういったところを利用する手もありますが、先ずは、ここで述べた発想力の要因とポイントを考慮して、自分で具体的なトレーニング法を考えてみては如何でしょうか。発想力を鍛える5つのポイントを実践する具体的な方法を考え、実行することこそ、トレーニングになります!

 

なお、アイデアノートを持ち歩き、気がついたことはすぐに書きとめましょう。ふと思いついたことは、案外忘れることがあるためです。

また、一つアイデアが浮かんでも、それで満足することなく、複数のアイデアを出すように心がけましょう。ある意見が出されたら反対意見を出して、競わせることにより、より良い意見にすることと同じです。

 

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