起業で人気のカフェ・雑貨屋・アパレルはなぜ潰れるのか

起業

日本三大夜景と言えば、「函館山」、「摩耶山」、「稲佐山」、三大祭は、「神田祭」、「天神祭」、「祇園祭」。起業の昔からの三大人気業種と言えば、「カフェ」、「雑貨屋」、「アパレル」ではないでしょうか。

 

人気の理由は、儲かることではなく、好きだから始めたという理由が多いですね。早期退職をして夫婦で始める人も多いでしょう。

しかし、帝国データバンクの調査によると、2017年12月の倒産件数696件の内、業種別では小売業が168件と断トツの1位。この3種が潰れやすいと裏付けるデータは公式なものはありませんでしたが、「カフェ」、「雑貨屋」、「アパレル」の3業種は多産多死と言われています。近所にできたと思ってもすぐに閉店しいていませんか?それは、なぜでしょうか。

 

ビジネスと好きなこと

 起業を考えている人は、当然、目指す業種があるでしょう。

では、なぜ、数ある中でその業種なのですか?

儲かるから、稼げそうだから、設備投資が不要なので、ノウハウやアイデアを持っている、みんながやっているから、昔からの憧れ、こだわりをもっているので……

 

理由はそれぞれでしょうが、「カフェ」、「雑貨屋」、「アパレル」を始める人は、こだわりが強い傾向にあります。

好きなことは覚えも早く、何より楽しいものです。起業をするということは、根本的には楽しくないといけません。好きなことだから、苦難でも楽しめるということは、とてもいいことです。

 

しかし、

こだわりが強すぎて自分本位になっていると、どうなるでしょうか。

高価なエスプレッソマシーンを導入して、こだわりのコーヒー豆を使う。提供するメニューのクオリティは上がるでしょう。

 

では、誰を相手に商売をするのですか。立地は合っていますか。

味の分かる金銭的な余裕のある人だけを相手にしても、当然、売り上げは上がりません。

 

売上=「客数」×「客単価」

スタバやコメダなどの大手喫茶店のコーヒー1杯の原価は10%程度です。利益率の高いドル箱メニューは、ビジネスとしては必要です。

 

雑貨屋やアパレルの場合はどうでしょうか。

こだわりのブランドやアイテムだけを取りそろえる。売り物は自分の気に入った物だけ。ほかは一切、認めない。

 

これでは、客層は広がりません。

版権やライセンスを持っているなど、利益率の高い商品を扱うことができるのであれば、客層が特定されていてもやっていけるかもしれません。

 

しかし、

好きなことを仕事にすることは、会社勤めと同じに考えていると、起業では間違った方向へと進みやすいものです。

 

常連客の扱い方

 夢の「カフェ」、「雑貨屋」、「アパレル」をこだわり抜いてオープン。

外装から内装までお金を掛けました。賃料も妥協しません。あなたのこだわりのメニューや品ぞろえ、お店の雰囲気を気に入ったお客様が常連になってくれるでしょう。

 

常連さんが増えてきて、グループができます。マスターのあなたは、常連さんとおしゃべりに夢中。

常連さんはお店のファンなので、いいことばかり言ってくれます。話しが盛り上がる中、お店に入ってくれた新規のお客様はどう思うでしょうか。

 

「常連さんが陣取っていて入りづらいお店だな」、「居心地が悪いので二度と来たくない」など思われます。

 

スタバ、良品計画、ユニクロなど大手は、常連客を特別視するでしょうか。

アルバイトスタッフとオーナーでは、お客様に対しての感覚が違うでしょうが、新規が入りづらい店舗は長続きしません。

 

誰しも経験があるのではないでしょうか。

初めて入ったお店で、常連さんとオーナーがベッタリ。よそ者が入ってきたような目で「ジッー」と見られる。居心地の悪さに、逃げるようにお店を出た。

もちろん、二度とそのお店には行っていない。数年後、そのお店の前を通ると閉店していた。

 

よくあることですが、いつの間にか自分がそうならないように気を付けたいものです。

古いお店で、何だかお客様が入っていない、または常連さんが集まってお茶を飲んで駄弁っているけど潰れないと不思議に思うこともあるでしょう。

実は、こういった古くからのお店は、学校や工場など大口があるので、来客の売り上げは生活に関係ない。不動産を持っていて、空き店舗で趣味のお店を営んでいるなどの理由で、やり繰りしています。

 

潰れる理由のソフト面

 上記で紹介した失敗するハード面に対して、今度はソフト面です。

想定できる問題(□)と起業前にできる対策(・)を見ていきましょう。

 

キャッシュフロー

※キャッシュフローとは文字通り、「お金の流れ」のことです。

□現金がなくなり仕入れができなくなる⇒

・資金の計算に間違いがないか

・業者に言われるがまま、内装や賃料などお金をかけすぎない

・軌道に乗りまで何年かかるのか計算をする

・生活費とお店のお金を分ける

・1カ月毎に仕入れ・経費・雑費など上限を決めて計算する

 

集客

 □商品に自信があったが、集客ができない⇒

・サイト作りや広告宣伝費にも投資する

・SNSなどを使い宣伝する

・地元の新聞や雑誌などにプレスリリースを送る

・コネがあれば、プレオープンで地元の有力者や家族を無料招待する

・そもそも立地やニーズに合っていない

・競合店の売上、客数、客単価、年齢層、性別を調べる

・商圏人口の調査、時間や曜日別の店舗前や近隣の人通りや交通量の調査

 

人材

 □人材がすぐに辞める、仕事を覚えない

・サービス残業など労働環境に問題を作らない

・ワンマンで物事を進めない

・マニュアル作りの徹底

・スタッフを大事にする

 

起業前は当たり前だと思っていても、いざ、自分が起業すると夢の実現に向かって周りが見えない状況になりやすくなります。

開業・創業して走り出すと、立ち止まって修正ができにくいものです。成功例は全てにあてはまりませんが、失敗例は全てにあてはまります。

 

商品が良ければ、口コミでお客様が自然と集まるわけではないのがビジネスの難しいところです。どれほど会社が大きくなっても、広告宣伝は大切です。大手の会社で広告代理店を利用していない企業はないほどです。

 

新規出店前にできる予想と調査

 出店前には、市場規模などを予想・調査していないと商売はできません。簡単な方法なので、必ず覚えてください。

 

市場規模から売り上げを予想する

 例えば、あなたがはじめる業界の全国の市場規模を127億円とします。

これを日本の人口(1億2,700万人)で割ると、1人あたり100円です。

 

人口100万人規模(商圏人口)で出店する場合、100円×100万人=1億円

競合店が10店舗あるとすると、1店舗あたりのシェアは10%として、

1億円÷10=1,000万円

 

この1,000万円があなたのお店の年間売上予想です。

しかし、新規出店で不利な点や品ぞろえなどが違うので、この限りではありません。

自分で調整して計算すると、より具体的な数字が出てきます。

 

この数字を計算して、参入する価値があるのか、立地は合っているのか見えてきます。

 

売る物や扱うサービスで商圏は変わってきます。

カフェの商圏人口は、こちらのサイトが参考になります。

 

大手カフェチェーンの出店立地の居住特性:

https://www.giken.co.jp/monthly-report/2015/vol53/

 

最後に

自分の理想の城を持つことは、誰しも夢です。しかし、理想のお店と儲かるお店作りは、全くの別物です。独りよがりのビジネスは、学生のサークル活動と同レベルです。お客様がいるから、経営が成り立ちます。当たり前ですが、主人公はお客様です。

 

学生街ならば、安くて量が多いメニューが喜ばれます。裕福な人の多い立地では、高くても自然食材のこだわりメニューが喜ばれるでしょう。

 

ロマンも大事ですが、電卓もお忘れなく。