From:松本泰二
起業を考えている時点から、実際に起業へ移すためには、二つの重要な力を備えていなければなりません。
それは特殊な知識や能力ではありません。また、もちろん自分の得意な方の力を認めながら、苦手な方の能力を強化していくことで大丈夫な力です。誰でも努力すれば身に着けることが出来る能力です。
それは、スピードと粘り強さです。ここで言うスピードとは、アイデアを素早く実行に移す行動力のことです。そして粘り強さとは、結果が出るまでひたすら改善と実行を繰り返し続ける忍耐力のことです。
この二つの力が無ければ、全く行動出来ないか、アイデアはどんどん出てくるが成功しないということになってしまいます。どちらか一方の力だけでは、起業家としての自分の価値を向上させることは出来ません。もちろん起業も成功する前に、失敗してしまうでしょう。
どうしてスピードと粘り強さがそんなに大切なのでしょうか。
スピードから考えてみましょう。
事業の世界では特に、「行動してみないと分からない」ということが沢山あります。むしろ最初から想定していたような成り行きにはならないと思っておいた方が良いかもしれません。
良いと思ったアイデアが市場から全く反応が無かったり、あるいはさらに改善していくなら、ヒットの可能性があるということに気付くかもしれません。しかしこれらのことは、まずそのアイデアを実行に移してみなければ全く分かりません。
アイデアを行動に移すスピードに欠けているなら、必ず他の企業がそれらの製品やサービスの改善において先を越すでしょう。こうしたことが続いていくなら、事業で成功することは決して出来ません。価値ある製品やサービスを提供する点で優位に立ち、市場において大きな位置を占めることは決して出来ないのです。
粘り強さについてはどうでしょうか。
アイデアを実行に移して、改善と実行、そして改善と実行を繰り返し、その作業を結果が出るまで続けるには、コツコツと地味な作業もいとわない忍耐力、粘り強さが必要です。研究者のように忍耐強く、実験と観察を繰り返さなければならないのです。
目先の成功や賞賛ばかりを求めていると、この成果の出ない時期に「やめてしまおうかな」と思ってしまうかもしれません。必要なのは、目標を明確に持って、それに必要な仕事を積み重ねていく粘り強さです。
この粘り強さとは自分のやり方に固執するという事ではありません。うまくいかなかったのなら、いつまでもそれに執着して、次のステップに出遅れたり、損失を大きくしてしまうことは確かに賢明ではありません。
しかし、始めたことがある程度の結果を出すまで、一通りやり続けてみるということも大切です。少しうまくいかなかったからとすぐに気が変わってばかりいるなら、真の成功を手にすることはやはりありません。一日一日をムダにせず、試行錯誤を繰り返し、改善を続けていく、そのための粘り強さが必要なのです。
成功した起業家は、起業に必要なものスキルとしてこの二つの能力を備えている場合が多くみられます。
成功したと言われている起業家も良く知ってみると、多くの失敗したアイデアを持っていたことが数多くあります。成功した事例は頻繁に持ち出されるので、そちらばかりが目につきますが、成功した人ほど、失敗の経験も多くしているのです。
しかし彼らが成功した起業家となった大きな要因は、そうした失敗から「学習」していったということです。数多くの失敗から、フィードバックを得て、改善を繰り返していったのです。
数多くのベストセラーを出した作家が、ベストセラーを出す秘訣について、「ベストセラーが出るまで本を出し続けることです!」と述べられたそうです。そして確かにその方はすでに100冊以上の本を出版されていたそうです。
誰もが地味な作業は面倒に感じて嫌がります。しかし、この「面倒くさい」ことを重点的に行なうことがすべてにおいて成功する秘訣なのかもしれません。起業においては結果が出るまでに必ず時間が掛かるということを考えると、このことが特に当てはまると言えます。
とは言っても、アイデアを行動に移すスピードが無ければ、そもそも市場に参加することも出来ません。ですから、スピードと粘り強さはどちらも欠けてはならない重要な力なのです。
しかし起業をしようとする人はアイデアやモチベーションは豊かに備えていることが多いので、目標を明確に定め、失敗をものともせず、結果が出るまで試行錯誤を繰り返すことのできる粘り強さが身に付けば、成功することが出来るでしょう。
事業において成長に終わりはありません。常に良い方法を考え、試し続けることが必要ですが、起業家はそこから楽しみを得ることが出来ます。成功する起業家とは、特別な能力のある人ではなく、目標を持ち続け、それを実行し続けることの出来る人なのです。