From:松本泰二
経営者にとって顧客と同等かそれ以上に大切なのが、運命を共にする社員でしょう。
会社の経営には苦しいこともあれば、歯を食いしばって耐え抜かなければならないような危機が必ず訪れます。そんな時に、社員が経営者と共に踏みとどまってくれるなら、会社は再び力を得て繁栄を取り戻すことが出来るでしょう。
このように会社のために踏みこたえてくれる社員は経営者にとって何よりも大切にしたい資産です。資金や、その他の何が欠けていても共に頑張ってくれる社員がいれば、なんとかなることがあります。
でも一緒に危機を乗り越えてくれるような社員、意欲を持って仕事に取り組んでくれる社員を得るにはどのようにすると良いのでしょうか?
それは経営者自身が、明確なビジョン、共に働くチーム全体を奮い立たせるようなビジョンを持っていなければならないということです。このビジョンは現実的であり、共に働く社員全体の心を掴み、動かせるようなものでなくてはなりません。こうしたビジョンを描くのは、経営のトップの責任です。
会社には様々な背景を持った社員が集まっています。それぞれの考え方のパターンや価値観、能力さえもそれぞれです。もし会社に明確なビジョンが欠けているなら、社員はバラバラの考えで好き勝手に行動し、会社は組織として成り立たなくなってしまうでしょう。
しかし経営者が社員と明確なビジョンを共有することが出来ていたらどうでしょうか?
社員各自は、組織の目指す目標と、どのような原則に基づいて、どのような価値観を持って、その目標を達成していったら良いかをはっきり知っています。さらに、目標が明確なので、その中で自分が果たすべき役割についても明確に理解することが出来ています。
そうすれば、何か不測の事態が起こったり、社員の間で意見の相違が生じるとしても、ビジョンがはっきりしているので、何を優先すればよいか、どのように行動すれば良いかがはっきり分かっています。
このビジョンとは、経営者がそのビジネスを始めようと思った時の動機や、ビジネスを始めることで叶えたいと思った夢です。キレイごとのように聞こえますが、人はお金だけでは心を動かすことが出来ません。人は働くことから、満足や、何かをやり遂げたという充実感を感じる必要があるのです。
あなたのビジョンは、社員や社会の共感を得ることが出来るでしょうか。そのビジョンのために力を出したい!と思わせることが出来るでしょうか?そうでなければ、人はついてこないでしょう。お金のために付いてくる人もいるかもしれませんが、力を尽くして踏みとどまってくれるような情熱をかけて仕事をしてくれる人を引き付けるのは難しいかもしれません。
ではどうやってこの経営のビジョンを作ることが出来るでしょうか?
まずは起業しようとしている人なら、起業メンバーを集め、あるいはすでに会社を経営している方なら、社員の様々な立場の人の中から幾人かを選び出して話し合いを行いましょう。
「どのくらいの規模の会社にしたいのか?会社としてどんなことを大切にしたいのか?(これは顧客にとって何が大切かといったことではありません。あなたの会社と社員にとって大切にしたいことです)。どんな分野でナンバーワンの会社になることを目指したいか?どんな雰囲気の会社にしたいのか?」といったことを話し合い、自社にとって大切な価値観を洗い出していきます。
例えば、あなたは「社員がいつも元気で、明るく働ける会社にしたい」と思うかもしれません。そうすれば、社員同士のコミュニケーションが活発になるような工夫につながるでしょうし、それが「社員が家族を大切にし、幸せな生活を送る基盤となる会社でありたい」と思うなら、社員が家族で過ごせるような勤務形態の工夫などにつながるでしょう。「社員が自分の造る製品に誇りを持てるような会社にしたい」というような価値観かもしれません。
ビジョンを明確にさせたなら、経営者はそれが社員に浸透するように率先して行動しましょう。事あるごとに、社員にビジョンを明確に伝え、社員がそれをはっきりと理解できるようにします。
経営者のビジョンがはっきりしている会社であれば社員も、「うちの会社はこういうビジョン・価値観を持っているから、こういう時はこうしよう」とか、「こういう方針を取った方が良いのではないだろうか」と考えることが出来るでしょう。一つの目標に向かって一体になっている意識があれば、お互いを尊重し合い、協力し合う社風が出来ていくでしょう。
そうすれば一人の成功を社員全員で喜ぶことが出来るようになり、苦しい時も、「自分はこういう価値観を達成するために仕事をしているから頑張ろう」と思ってくれるでしょう。
このような経営者のビジョンを明確に共有できている会社では、社員はすぐにその会社を離れようとは思わず、共に成長してくる同士となってくれるでしょう。
※今回はわかりやすく社員としてお話しましたが、これは社員だけではなく外部協力者にも同じことがいえます。