From:松本泰二
「独立して、起業したい!」、「起業して自分の好きなことをやりたい!」、「起業して儲けたい!」いろいろな動機で「起業」を考え始める人がいますが、大抵の人は、具体的にどんなビジネス・商売をすればよいのか、そもそもどんな手順で進めるのか、わからない状況でしょう。
また、資金はどうするのか、失敗したらどうしようと心配して踏み出せずにいる人もいるでしょう。起業するにあたって、どんなことを考慮し、何をすべきか考えてみよう!
起業したいと思う動機や現在の環境に応じて、起業スタイルを検討し、起業手順を考えよう。
◇資金と起業スタイル
起業するといっても、僅かな資金で1人で細々とやるのか、あるいは数10万円・数百万円の資金を投じて店舗を構えるのか、その形態は様々です。また、起業したいと思った動機や、現在何をしているかによっても起業のやり方が、違ってきます。
資金がないからといって、起業を諦めることはありません。ネットワークに接続したパソコンのある家庭は珍しくなくなりましたが、これで始められるビジネスがいろいろあります。
「クラウドワークス」や「ランサーズ」のような仕事の依頼や受注を仲介するクラウドソーシングのサイトに登録しておけば、経験の有無に応じてライター、ウエブデザイナーやプログラミングなど様々な仕事を始めることができます。
最近はアマゾンや楽天市場などのネット販売を利用する人も多くなってきて町の本屋さんがどんどん消えているという話などもありますが、「BASE」などのサイトに登録すれば、主婦や学生でも簡単にネットショップを作れ、かなりの売上げを上げる人もいるとのことです。
これらのインターネットを介して起業することの大きなメリットは、元の資金がほとんど0円なので、失敗しても困らないことです。このため、繰り返し挑戦できます。
ある程度の資金があり、実店舗を構えて商売をしたいと考えている人もいるでしょう。素人が突然店を構えるのはかなり大変ですが、コンビニに代表されるようなフランチャイズに加盟すれば、仕入れ・販売・集客・商品開発などノウハウを手に入れて開業できます。
職種も、小売業、外食産業、不動産や学習塾等々、様々あり、自分の興味、資格や経験に応じて始めることができます。
また、「地方創生」政策などにより、規制緩和や改革が行われていることに伴い、地方自治体や国の機関により起業のセミナー、補助金・助成金等、起業に対する様々な支援事業が行われています。
これらの支援を受けると、事業立ち上げに伴う各種許認可や税制で有利になることもあるそうです。さらに、2006年から施行された新会社法により1円からでも会社を設立できるようになり、LLC(合同会社)という新しい会社形態が生まれました。これらを活用しない手はありません。
◇起業の動機や現在の環境は?
現在、大学や大学院あるいは高専に在学中の学生で起業を目指している人もいると思います。ビル・ゲイツやホリエモンなどがそうでした。卒業までは数年あるが、就職せずに起業したい、あるいはもうすぐ卒業だが就活に失敗した、等々学生といってもいろいろな動機があると思います
ただし、二十歳前後という若さと、体力やバイタリティーが何よりの武器です。起業のネタを探したり、やり方や立ち上げようとしている事業などについて勉強する時間があり、失敗したとしても再挑戦することができ、繰り返し失敗しているうちにコツを覚えて成功に至ることも考えられます。
また、学生は社会経験も少なく、商売を始めるといっても右も左もわからないと思います。そんな学生に対してセミナーを開講しているビジネススクールもあります。起業に必要なスキルを学習するところから、模擬店のようなところで実践的に体得したりして、自分が取り組みたい事業の事業プランを磨き上げ、修了とのことで、就職を控えた4年生だけでなく、1年生から全学年を対象にしています。
資金といっても、アルバイトで稼いだお金や親や親戚から借りられるかどうか等で、限度があるかもしれませんが、興味のある事業を探して、準備できた資金に見合ったスタイルで、果敢に挑戦することです。
現在、会社に勤めばりばりの現役で働いているが、会社に拘束されず自分の力量で自由に仕事をしたいと考えている人もいると思います。ただし、これまで、どんどん成果を上げて会社に貢献してきたつもりでも、自分の力だけでなく会社の信用や上司・同僚の助けもありました。ノルマやスケジュール管理もありました。他人の援助なしで、全く自力で仕事進め、厳しく自己管理できるかどうか熟慮することが大事です。
また、ローンを組むにしても、会社員であればすぐに融資してくれ、クレジット加入なども簡単でしたが、独立したばかりで、信用がなければ厳しくなります。起業当初は収入がないことも考えられ、事業資金だけでなく、生活費もある程度蓄えておく必要もあります。退職手続きの前に、いろいろと準備しておくことがあります。
なお、会社によっては、社内起業という制度もありますので、起業しやすいかもしれません。定年退職して、年金暮らしを始めたが、まだまだ元気なので、これまでの仕事の経験を生かして、あるいは長年興味を抱いてきたことに関連して起業したいという人も増えてきたそうです。現役時代に蓄えた預金や退職金など、開業資金もある程度準備できますが、起業しても順調に伸びなかった場合を考える必要があります。
若い人のように、やり直しがきかないのです。年金だけでは足りない生活費への切り崩しや高齢化した場合の介護費用なども考えておく必要があります。この点、ほとんど資金0円で始められるクラウドソーシングやアフィリエイト等に登録して仕事を始めることは、心配ないところでしょうか?現役時代に培った技量や人脈もあります。何といっても、時間がたっぷりあります。
どんな商売、事業を始める?
これまで説明してきたことを考慮すると、現在の自分の環境や資金の状況に応じて、起業スタイルと起業手順などの方向性がある程度見えてきたかと思います。
そこで、次に考えることは、具体的に「どんな商売、事業を始めるか」ということです。起業したいと思った時点で、始めたい商売や事業が決まっている人もいますが、大抵の人はこれがわからなくて悩んでいると思います。「どんな商売、事業を始めるか」、すなわち「起業のネタ」探しのツール、発想法をまとめてみました。
◇「起業のネタ」探し、起業について考えるためのツール
誰でも先ずやることはインターネットで調べることでしょう。「起業 ネタ」とキーワードを入れて検索すると、「ローリスクで起業できそうな~」、「儲かる商売ネタ~」など無数といえるほどのウエブサイトが出てきます。
パソコンやスマホなど、既にインターネットに接続してある環境では、金もかからずに、気になったところをすぐに調べられる利点はありますが、次々と眺めているうちに目移りして結局どれがよいかわからなくなってしまうことになりかねません。また、現実的に信頼できる情報かどうかも注意して検討する必要があります。
書籍は、インターネットと逆に、手に入れるのに多少の時間とお金がかかりますが、じっくり考えたり、発想を得るのに役立ちます。アマゾンやオンライン書店Honuya Clubなどで調べると、起業に関係した本が10冊を超えて数多く出版されており、いくつかの例を挙げてみると
「起業のネタ」森 英樹 著、明日香出版社、2005年
「起業・企画・営業・雑談のネタは日常の諦めている不便利から」田口 元 著、英治出版
「どんな人にも1つや2つ儲けのネタはある!」吉江 勝 著、青春出版社
のように、ネタ探しの参考に、すぐにでも読みたくなるような本があります。
なお、起業について何をしようかと考える際に、上述したようなハウツー本だけでなく、起業に成功した人の伝記や自伝、あるいは小さい規模から大きく成長した会社を取り上げたノンフィクションなども参考になります。つい最近出版された興味深い本では、朝日新聞出版から出された、似鳥昭雄氏の自伝「ニトリ成功の5原則」があります。著者は、日本全国に500以上の店舗を構える家具のチェーン店「ニトリ」の創業者です。
自分の幼少期から、小さな家具店を立ち上げ、現在のチェーン店に成長するまでの流れを振り返りながら、「若い人が社会に出て成功してほしいと考えて掲げた」5原則で、「広く世の中の若い人たちにも役立ててもらえればと思い」出版したそうです。
学校では落ちこぼれだったとのことですが、大学卒業後、いろいろあった末、他にやることがなくて、家具の個人商店を開いたそうです。店の経営がうまくいかなくて、鬱状態になって死ぬことばかり考えていたこともあったそうです。
家具店を開いた理由が、「近所に家具屋がなかった」とのことですが、現在起業のネタに悩んでいる人は、どう感じたでしょうか?詳しい内容は本を読んでもらうことにして、起業をしたいと思っている人には、意欲をかき立てられ、成功に導くバイブルになりそうな本です。
◇自分独自のネタを考えよう
先程述べたように、インターネット、本やテレビで情報を眺めて、素晴らしいと感動したアイデアがあったとしても、先人と全く同じアイデアで起業しても成功しないでしょう。先人と似たアイデアでも何らかの新しいことが付加されたアイデア、あるいは先人のアイデアをヒントに発想した自分独自のアイデアを見つけなければいけません。
ところが、なかなか発想できなくて困っているのです。新しいアイデアを引き出す良い方法がないでしょうか?インターネットを検索すると、「発想力を鍛えるための7ステップ~」、「アイデア発想力を鍛えるシンプル~」、「凡人が発想力を~」など様々なウエブサイトがあります。
これらの説明で出てくるキーワードは似たようなものが多く、列挙すると、「異質なモノの組み合わせ」、「逆転の発想」、「たくさん情報を仕入れる」、「散歩や瞑想」、「考えない時間をつくる」、「通勤時間を変えるなどふだんと別のことをやってみる」、「周りを見る」、「1つのことに集中しない」、「自分だったらどうするか考える」、「ふだんの生活の中で、嫌なこと、~、自分にとってネガティブなものを見つける」などがあります。
これらのキーワードを眺めても精神論的なものが多く、なかなか具体性に欠けます。あまり奇抜なことを考えても実現性もなくなりますので、身近なところで、ごくありふれた商売に新たなアイデアが付加されて、大きく変貌した例を見てみましょう。先程列挙したキーワードの趣旨が納得できるかもしれません。
<床屋さん>
床屋さんといえば、髪のカットはもちろん、シャンプー、ひげ剃り(顔そり)、マッサージまであり、1時間前後時間がかかり、料金も3,000円以上で、月曜日が定休日というのが定石でした。ところが、最近は、カットのみで15分程度で終わり、値段も1,000円程度で、定休日なしというのが出てきて繁盛しています。横浜や品川等の駅中にもあり、通勤の途中でカットしてもらう人もいます。
いくら丁寧に洗髪やひげ剃りをしてもらったところで、翌日からは毎日自分でするわけです。本質的なことだけを取り出して、無駄な時間、手間やお金をかけない商売を始めるという発想は、いろいろ応用できそうです!
<寿司屋さん>
従来の寿司屋さんは値段が高く、家族連れで頻繁に利用できませんが、皿に載せられた寿司がベルトコンベアーで運ばれてくる回転寿司は、安価で気楽に入れます。Wikipediaによると、大阪の立ち喰い寿司店経営者が、ビール製造のベルトコンベアーをヒントに、多数の客の注文を低コストで効率的にさばくことを目的として考案し、1958年最初の回転寿司店を開いたそうですが、発想力で「異質なモノの組み合わせ」の代表例でしょうか?
今さらありふれた例を取り上げているのかと思うかもしれませんが、起業の参考になるのは、設備やサービス形態がどんどん変化していることです。当初は熟練した職人さんが手で握っていたのがロボット化されたり、皿の裏にICタグを付けて鮮度をチェックしたり進化しています。
また、インターネットを活用して、スマホやパソコンから店の空いている時間をチェックしたり、時間指定で予約するなど、サービス内容がどんどん進化しています。
その他、宅急便は同日配達や時間指定、コンビニではATMによる金の入出、公共料金の支払い、宅急便の荷物の授受、等々表向きはそれほど変化がありませんが、内容が目まぐるしく進化しています。町をぶらぶらしながら、あるいは電話帳などを眺めながら、まだ旧態依然でサービスしている商売を探して、インターネットやITを活用した新たなサービスを展開した起業のネタを考えてみましょう。
まとめ
起業するにあたって、どんなことを考慮し、何をすべきか考えてみました。要点を整理すると、起業したいと思う動機や現在の環境に応じて、起業スタイルを検討し、起業手順を考え、「起業のネタ」探し、起業について考えるためのツールを検討しました。
また、自分独自のネタを考えるためのポイントを取り上げ、身近なところで、ごくありふれた商売に新たなアイデアが付加されて、大きく変貌した例を見てみました。これらを参考にして、頭を整理し、起業するにあたって何をするか考えましょう。