陳列棚を見れば経営者の意識がわかる

マーケティング

From:松本泰二

スーパーマーケットは毎週のようにバーゲンセールをやっています。新聞の折り込みチラシをチェックして、主婦は1円でも安い商品を求めてA店からB店へとハシゴをします。

仕入れ値より安い価格で販売する目的は、自分の店へ足を運んでもらうためです。そのついでにほかの商品も購入してもらおうというはっきりした販売戦略があるからです。そういう戦略もなく、単に安売りだけで売り上げを伸ばそうとするとしばしば失敗します。

 

高価格、中価格、低価格…3つの戦略

商品の価格をどのレベルに設定するかという価格戦略は、大きく分けて3つあります。高価格、中価格、低価格がそれです。カン違いしてほしくないのですが、同じ商品を三段階に分けるわけではありません。

それぞれの価格帯に応じたクオリティを備えた商品を品揃えするという意味です。

 

高価格戦略の代表としてはブランドものがあります。商品の供給を抑え、常に品薄状態にしておくことで価値を高めて、長期的に利益を上げようとする戦略です。しかし、それなりの資本がなければこの戦略をとることはできません。

 

低価格戦略はすぐに効果が出る

高価格戦略に比べると、低価格戦略はすぐ実行できます。余分な経費は必要ありません。しかも、すぐに効果が表れます。消費者が商品を選ぶときの基準はいろいろありますが、価格は大きな比重を占めています。同じ品質ならできるだけ安い商品を選ぶのは当然のことです。

 

ここで注意しなければならないのは品質です。低価格路線はすぐ効果が出てしかも分かりやすい戦略です。経営者、あるいは店長クラスの責任者がそれを選び、安売りを前面に打ち出した販売路線をとったとしましょう。

それでも利益を生もうとすれば仕入れ値を下げなくてはなりません。その結果、品質は確実にダウンします。

 

安い商品は品質が劣る

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安い商品の品質が劣る典型的な例が100円均一ショップです。時勢を反映させているのか人気は高く、今では100円均一ショップで扱っている商品は多岐にわたっています。

では、100円均一商品を購入する消費者はどんな気持ちでこの店を利用しているのでしょう? 安い価格と高い品質を求めているでしょうか?

 

決してそんなことはないでしょう。すぐ故障して使いものにならなくなっても、どうせ100円なんだからという意識は常にあります。つまり、100円の商品にはそれだけの価値しかないことがわかっているのです。

それでも人気が高いのは、100円の商品には100円の商品なりの存在価値があるからです。機構が複雑ではない単純な商品、例えばノートや消しゴム、グラス、灰皿などであれば、通常の機能を望む限り問題はありません。

 

品質の劣る商品は限られた範囲でしか売れない

しかし、たとえば食品だったらどうでしょう? 

農薬まみれの野菜や添加物が大量に投入された加工食品、水揚げされて何日も経過した鮮魚を賢い消費者は購入するでしょうか? いくら安くても、よほど節約を強いられている消費者でない限り買わないでしょう。

 

ちゃんとした食品はそれなりの代価を払わないと手に入れることはできません。それはちゃんとした消費者なら誰でも知っています。

さらには、継続してちゃんとした商品を供給するには、それなりの利益がなければビジネスは成り立ちません。これはメーカー(生産者)、販売店、消費者がすべて対等の関係であることを表しています。メーカーと販売店が適正な利益を上げない限り、この関係は円滑に機能しないのです。

 

価格路線の修正

現在、低価格路線を歩んでいてなかなか将来の展望が見えない経営者がいれば、ぜひ中価格路線に変更してみることをお勧めします。

とはいえ、これはたやすく決断できるものではありません。商品を一斉に値上げすれば顧客が離れる可能性が高い……そう思うのも無理はありません。それまでの安い商品を求めて来店していた顧客は間違いなく離れるでしょう。

 

それからが経営者や店長の腕の見せどころです。低価格ではないけれどちゃんとした商品、他の店にはないユニークな商品、本当に望まれていた商品を探して陳列棚に並べなければなりません。

これは言葉でいうほど簡単ではありません。待っていても情報は集まりませんから自分の足で稼がなくてはなりません。無駄足を踏むことも再三再四でしょう。

 

しかし、その努力が反映された店頭が消費者の興味を引く可能性は非常に高いとみていいのではないでしょうか。そして、陳列棚に並んだ商品を見て経営者の心意気を知り、大いに共感を持つに違いありません。