人間は危険を乗り越えようと知恵を出す

マインド(考え方)

From:松本泰二

弱肉強食と言えば、野生動物では弱者である草食動物が強者である肉食動物の餌になることと単純な関係を連想しがちでありますが、それぞれの生態を調べてみるとそれほど単純ではないことが分かります。

両者はお互いにゲームを行うように競い合って勝った負けたの勝負をしているわけではなく、それぞれ生き延びて本能的に子孫を残す行動をしているのです。つまり、食物連鎖を構成しているのです。

 

危険が近づいた場合に、一瞬の遅れが・・・

肉食動物は当然鋭い牙、爪や顎を持ち他の動物を追いかけあるいは待ち伏せして捕獲して食料として食べて生きるのですが、相手の動物もおとなしく食べられるわけではなく、逃走したり防御したりしますので、いつも食料に有り付けるとは限らず、餓死することもあるのです。

一方、草食動物は食料である草や木の実が逃げることはないので襲うための牙や爪が必要でなく、逆に肉食動物の攻撃から逃れるために視覚や聴覚が発達しており、運動器官は逃走するのに効率よくできているとのことです。

 

わかりやすい例として、ウサギは左右別々に動かすことのできる長い耳でレーダのように360度回りの音を敏感に感じることができ、遠くから自分を狙っている動物が近づいてきたときにはいち早く察知して全力で逃げ去ります。

 

ウサギのような動物は危険が近づいた場合に、一瞬の遅れが命を落とすことになるので、本能的に一目散に逃げるのは当たり前ですが、

 

我々人間の場合にはどうでしょうか?

暴漢に襲われたときに仲間を庇うために立ちはだかったり、火災現場で逃げ遅れた肉親を助けるために火の中に飛び込んだりして、危険から逃げようとしない場合があります。

 

また、五十歩百歩ということわざもありますが、現実的には同じ危険な目に遭っても一目散に逃げる人とそれほど逃げない人がいます。本能的に逃げ足が速いウサギに対して、人間は単純に逃げるだけではないのです。

 

それでは、ビジネスにおいてはどうでしょうか?

強力な同業者が出てきたり、新たに立ち上げた事業が思うように進展しなかった場合に、競争を避けたりすぐに撤退して逃げたのでは、やがては倒産に至るのです。ウサギと違って、逃げたために却って捕まってしまうのです。

ビジネスにおいては、危険が迫ったら直ぐさま逃げるのではなく、先ずは情報収集して事態を分析し、様々な対処法を検討するのです。

 

誰でも知っている名立たる会社でも、倒産の危機を経験し復活した例が数多くあります。「はやい・うまい・やすい」ことで評判の「牛丼の吉野家」は1970年に3店舗で開業しましたが、9年後には272店舗に拡大し売上げも83倍程に急成長しました。

 

ところが、アメリカ産牛肉の価格が急騰したことと急激な店舗拡大が裏目に出て経営が悪化したために肉の質を落とすとともに値上げをしたところ、客が遠のいて翌年に倒産してしまったのです。

そこで、店の本来の姿を見直して「うまい」を最優先に販売を再開した結果4年で借金を完済し、その後も危機はあったのですが復活したのです。このように、危機に直面しても逃げることなく、難局を乗り越える知恵を出して復活したのです。

 

危険を乗り越えようと知恵を出す

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また、テレビタレントの田中義剛さんは「花畑牧場」のオーナーとなって牧場で育てた乳牛から搾った牛乳を使って珍しいチーズの開発に挑戦しましたが、商品化に失敗して大きな負債を抱えてしまいます。普通ならここで牧場を手放して逃げ出すところですが、諦めずにさらに次の商品開発を行ったのが生キャラメルで、一躍大ブームとなりました。

 

しかし、ブームも永遠に続くことはなく、再度危機を迎えますがその度新たなアイデアを出して復活しています。幾度となく危機に遭っていますが逃げない強い精神力で乗り越えています。このほかに、世界的な大企業のIBMやアップル社なども存亡の危機に立たされてから復活したことで有名です。

 

 

このように、ウサギのような動物は危険だと感じた瞬間に本能的に逃げ出すのですが、人間は危険を乗り越えようと知恵を出すのです。当然、ウサギの耳のように周囲の状況を監視し、危険を察知したら逃げるのではなく避けたり迂回して進むことができれば最高です。

 

上手に危機を回避している場合にはそのような状況が当事者以外には見えないため、当然話題にもなりませんが、数多くあるかと思います。しかしながら、事前に危機を予測できても回避できない場合もあるのです。

 

「ピンチはチャンス」ということわざもあります。ビジネスにおいて、避けられない危機に直面した際にはウサギのように逃げるのではなく、様々な対策を講じて危機を乗り越え更なる発展に繋げて企業を存続させるのが知恵ある経営者なのです。