営業マンはコーディネーターたるべし

ビジネスの現場では売るという行為が絶対に欠かせません。モノが売れなければビジネスは成り立たないのですから。しかし、その売り方が今、大きな転機を迎えています。

訪問してクライアントと面談し、セールストークで買ってもらうという昔ながらの方法では売れなくなっているからです。一方で、営業という職種を嫌う若者が増えていることも事実です。これからの営業活動を考えるための一つの指針を提示してみました。

 

営業マンは嫌われ者

人間の行動は快楽原則に左右されると唱えたのはG・フェヒナーで、それを精神分析に取り入れたのがS・フロイトでした。快楽を求め、苦痛を避けるために行動するというのが人間の本質であり、マーケティングの分野では「快適な生活を送るために商品を購入するが、代価を支払うときは苦痛を感じる」と解釈されています。

この視点に立つ以上、モノを売り込みにやって来る営業マンは苦痛を伴う存在であり、クライアントにとってそもそも嫌われている存在であることを知っておかなくてはなりません。まれに、ちょうど欲しかった商品のセールスに訪れたため商談がとんとん拍子に進んだという例がないでもないのですが、木の根につまずいて転ぶウサギを求めて毎日昼寝をするようなものです。そういうケースは生涯に一度出合うかどうかの幸運だと思わなければなりません。

 

嫌われる営業マンがさらに嫌われる理由

もともと嫌われている営業マンがさらに嫌われる理由はたくさんあります。順不同で列挙してみます。

 

営業マンがさらに嫌われる理由

①来社のタイミングが悪い。
昼食に出かけようとしているとき、珍しく早く区切りがついて定時で退社しようとしていたときに訪れる営業マンがいます。先方の都合はまったくお構いなしで、自分のことしか考えていません。

②身だしなみに無頓着で、話し方も不快。
取引先を訪れる場合は最低限の身だしなみを整えておかなければなりません。それが社会人としてのマナーです。特に、クライアントを訪れるときは清潔感が大切です。だらしがないと商品も信用されません。同様に、無意味な大声や横柄な話し方、タメ口もNGです。これは営業マンというよりもビジネスマンとしての最低限のマナーです。

③商品についての適切な情報を提供せず、優れている点だけを強調する。
マイナス要素も最初から提示しておくべきです。現在はWebを通じていくらでも情報を入手できる時代です。クライアントがその気になれば簡単に調べることができます。そのとき、アイツはこんなこと言わなかったなということになれば信頼を失います。

④クライアントのニーズが把握できてなく、一人よがりで話を進める。
クライアントの業種・業態が理解できないまま、自分で適当に設定して機嫌よく商品のメリットをとうとうとしゃべるタイプです。口を挟もうにもそのきっかけをなかなかつかませてくれません。セールストークには相当な自信があるのでしょう。

⑤売り込もうとする意識が強い。
10人のクライアントに会ったら全員に買ってもらおうという目標を立てているのか、売らんかな精神旺盛でぐいぐいと押してきます。プッシュ型セールスの典型といっていいでしょう。クライアントは自分で買ったと思いたいのに、これでは買わされたという印象が強く、リピートは期待できません。

⑥情熱が感じられない。
これは反対に「本当に売りたいの?」と聞きたくなるほど熱意のない営業マンです。一応、商品説明はするのですが心はここにあらずといった感じで、住宅やクルマの場合、自社の商品を購入したかどうか尋ねるとほとんどノーと答えます。これでは商品のよさを伝えることはできません。

ほかにも、態度が大きくて売ってやらんかな精神が見え見えの営業マン、価格の話をすると「お金がないんですね」という営業マン、すぐ買ってくれたクライアントの話をする営業マンなどいろいろいます。苦痛を避けたいと願っている人間は苦労して得た報酬を手放したくないのです。ましてや、嫌いな営業マンからは絶対にモノを買おうとはしないでしょう。

 

善良な営業マンは嫌われたくないと思っている

営業マンも人の子です。相手の都合を気にせず強引なプッシュ型セールスを実行するタイプもいますが、実情は大半が善良な一市民です。営業マンがクライアントに嫌われていることは重々承知しているのです。そのため、嫌われたくない一心からついついセールストークの舌先が鈍ります。

 

表面的には要領よく商品を説明しているように見えますが、熱意のこもっていない話し方では相手もそれを微妙に感じ、魅力は十分伝わりません。

それでいて上司は昔ながらの訪問第一主義。今日は最低でも契約を3本取ってこいなどとノルマを課します。これではとてもまともな営業活動などできません。そうでなくてもモノを売りにくい時代なのです。その上さらに営業マンが自ら心理状態にブロックをかけるのですから、これでは売上が伸びるはずがありません。

 

これからの営業はコーディネーター

嫌われる営業マンのパターンをいくつか紹介しましたが、ではそれらの問題をクリアすれば嫌われることはなくなり、成績が上がるのでしょうか? 答えはノーです。嫌われる度合いは少なくなりはしても、それがイコール売上アップにつながるケースは少ないでしょう。なぜなら、営業のあり方そのものが大きく変わりつつある時代だからです。

 

昔ながらの訪問&プッシュ型の営業では効率が非常に悪くなっていることはいろいろなシーンで目にしていると思います。以前は商品・サービスをこと細かく説明するのが営業マンの主たる役目でした。商談の際はパンフレットやカタログで説明しながら試算し、支払い条件や納期などを詰めていくというのが営業現場での作業でした。

 

しかし、今はWeb上で情報が氾濫しています。商品についての情報など知りたいと思えばクライアントは簡単に集められます。競合品に対してはクライアントの方が詳しいかもしれません。こう書けばあなたにはもうお分かりでしょう。クライアントが求めているのはWebでは得られない情報です。

最新情報、裏情報、そのクライアントだからこそ得られるベネフィットなどは両者の立場をよく知っている営業マンでなければ知ることができない貴重な情報です。これからの営業はこのように、クライアントと自社の商品・サービスを結びつけるコーディネーターのような存在になるべきなのです。

 

コーディネーターとしての営業マン

コーディネーターたる営業マンはどうあればいいかを考えてみましょう。一般に、営業の現場では次のような五つのプロセスを経て仕事が進行します。

五つのプロセス

①見込み客の選別・リストアップ
②初回訪問
③プレゼンテーション
④契約
⑤アフターフォロー

第一段階では名刺の交換です。展示会やセミナー、紹介、ホームページからの問い合わせなどいろいろなパターンがあるでしょう。この時点ではお互いに相手の存在を知る程度にとどめておきます。大まかなことは知り得たとしても、どんな問題を抱えているのか、今後どうしたいのかといった突っ込んだ話はまだできないのが通例です。この時点では通常の営業となんら変わることはありません。

初回の訪問で先方の状況をヒアリングします。このとき、決して売り込みはしません。それまでの習慣で、「それでしたらぜひ我が社の○○を試してみてください」と売り込みたいでしょうが、自分はコーディネーターであることを肝に銘じておきます。そして、なによりもクライアントの心を開き、信頼を得ることに傾注します。

 

信頼を得ることが先決

見知らぬ人間の言葉を100%信用することなど実社会ではあり得ません。大学教授、警察関係者、医者などよほど信頼できる立場にいる人ならその限りではありませんが、特に売込みに訪れたセールスマンの言葉は最初から疑ってかかるのが常識です。それに近い状態からスタートするのですから、営業マンの話す内容はおろか、その人間性までうさん臭いと思われていると思ってください。

その営業マンが最初にとりかからなければならないのは、クライアントの信頼を得ることです。その商品がどんなに優れていようと、その業界では画期的な価格であったとしても、信頼できない営業マンからそう聞かされると右から左に抜けてしまいます。モノを売りたいのではなく、コーディネートしたいのだと100万回訴えてみたところで効果はありません。

 

一歩ずつ信頼関係を築く

クライアントの信頼を得るための方法はいくつかあります。以下、挙げてみました。

 

クライアントの信頼を得るための方法

◇信頼に足る人間だという証拠を示す
いい加減な営業マンではなく、これまで数々の実績を上げてきた事実を知ってもらう方法の一つとして、両者共通の知り合いがいれば話は早くなります。「△△の○○さんとは親しくさせていただいています」と聞けば、クライアントはそれだけで心を開いてくれます。自分のブログを見てもらうのもいいでしょう。

仕事に限らず、趣味の世界でも構いませんから質の高い内容を綴っていれば、あなたに対する信用度は格段に上がります。フェイスブックやメルマガも有効に活用しましょう。

◇決して売込みをしない
この人は売込みをしないということが分かれば安心して会ってくれるようになりますし、スムーズに垣根を取り払ってくれるでしょう。売り込もう売り込もうとする営業マンにはガードを固めますが、それをしない人には安心していろいろな内部事情を教えてくれます。

クライアントは自分が優位に立っていると思うと口が軽くなり、現在抱えている各種の問題を教えてくれます。最終的にそれは契約に持ち込むための大きな武器となります。

相手にしゃべらせて有益な情報をつかむのはコーディネーターの大きな役割の一つです。それを素材にしてクライアントが利益を得る方策を考えるのですから。

 

◇状況を常に客観的に観察する
売込みをしないことにも通じるのですが、クライアントの現状を常に客観的に見つめ、自社商品や他社の商品を導入すればどのようなメリット・デメリットが生じるかを冷静に判断する能力が望まれます。

自社が不利になる点についても隠すことなく報告し、クライアントの利益を最優先していることを印象づけます。自社の利益を追うばかりに他社を根拠のない非難でおとしめるようでは信頼を得ることはできません。

 

◇情熱を持って仕事をする
売り込みをせず客観的に状況を観察するなどと書くとクールな印象を受けます。しかし、判断する目は冷静であっても、クライアントの利益を上げる点については情熱を持って事に当たるぐらいの「熱さ」も必要です。問題をクリアするためには徹夜も辞さない態度を見せられると、クライアントの信頼度は一挙にアップします。

◇ときには感情を露にする
情熱と似たところがありますが、感情の発露もたまには必要です。クライアントの不利益になるアクシデントが発生すれば怒りを見せるのは当然です。一緒になって大声で笑うこともお勧めします。ときには人間らしい面を見せると、「ああ、この人も人間なんだ」と共感を得てもらえます。それは関係性を深めるプラス要素にはなっても、マイナスになることはありません。

 

 

問題点の把握とニーズの顕在化

信頼感を深めていく過程で、クライアントが抱えているさまざまな問題点に触れていくことでしょう。コーディネーターたる営業マンはそれらを一つずつ拾い上げ、分析して、どうすれば解決できるかを検討します。いうまでもなく、その時点では自社の利益をできるだけ考えません。

クライアントの問題解決が最優先です。他の業者、あるいは他の部署との関係性が分かりづらい場合は繰り返し確認し、問題を完全に把握しなくてはなりません。その点をいい加減に判断すると間違った方向に行ってしまいます。すると、せっかく築き上げたあなたに対する信頼を失う可能性があります。

 

しつこいほど念を入れて確認する過程で、クライアント側も問題点がどこにあるかをしっかり認識してくるのです。そうすれば、問題解決のためにはどうすればいいかというあなたの提案に真剣に耳を傾けてくれるはずです。

ただ、あなたの守備範囲を越える問題が出てくる場合も珍しくありません。その場合は社内外のスタッフにアドバイスを求めるべきでしょう。「専門外です」の一言で放置するのは得策ではありません。あなたはコーディネーターなのです。すべて自分で解決する必要はありません。その方面に詳しい人とクライアントをつなぐことができればコーディネーターの仕事は十分全うしたといえるでしょう。

 

プレゼンは商品紹介の場ではない

クライアント側の状況や問題点がしっかり把握できたところでその解決策を探り、根拠を明示するための資料を揃える段階に移ります。いわゆるプレゼンテーションの準備です。このとき、くれぐれも注意しなければならないのは、プレゼンテーションは商品の紹介や解説をする場ではないということです。自社の商品を売り込むことが目的だと勘違いすると、しばしばそういう結果に陥りがちです。目的はあくまでもクライアントが抱えている問題点の指摘とその原因、および解決策の提示にあります。

このとき、ケースによっては自社の商品を導入せずに解決できる場合があるやもしれません。そんなときでも平然と他社の商品を導入するようにアドバイスするべきです。コーディネーターであって、決してセールスマンではないことを肝に銘じておきましょう。そうしておくことによって、あなたの株は飛躍的にアップすることは間違いありません。

 

プレゼンは論理的に、なおかつ短時間で

プレゼンについてもう一点付け加えておきましょう。慣れていない人がしばしば陥りがちなのが、資料だけ揃えてあとは事前の準備もなしに話し始めることです。自社の会議ではそれで通用しても、社外の人を説得する場でそれをやると惨めな結果に終わります。

以下、要点をまとめてみました。

 

◇話す順序を決めておく
プレゼンは理路整然と進めていかなければなりません。A=B=C=Dと進めていけば分かりやすいのですが、A=D=B=Cとなると関連が分かりづらく、結局なにを言いたかったのか全体像がつかめなかったという結果になります。それを防ぐにはシナリオを用意しておくことをお勧めします。話す内容をすべて文字にしてしまうと棒読みになる可能性があるので、キーワードだけを書き出しておいて、最初がA、次にB、そしてCと決めておけばいいでしょう。

◇理想的なパターン
クライアントのためのプレゼンとしてよく使われるのは、問題点を指摘する=なぜその問題が生まれたのか=解決のための方策=その結果、どのようなメリットが生まれるか=そう断定できる理由というように順序立てて説明できれば理想的です。しかし、単に問題点と解決策だけを提示する人が少なくありません。それだとクライアントの頭を通り過ぎる可能性が高く、なかなか行動に結びつきません。

あなたが優れたコーディネーターであることを証明するには、問題が生じた理由、解決したときに得られるメリット、そして必ず解決できるという裏付けが説明できていないといけません。そこまでの発言ができるということは、クライアントの事情を徹底して調べ、理解し、考えなければなりません。その結果がコーディネーターとしての格付けに大きく左右することになるのです。

◇質問には速やかに答える
プレゼンが一段落するとクライアントから次々に質問が飛び出します。コーディネーターはそれらに対して即座に、しかも明快に答えなければなりません。もたもたしていては、それまでの理路整然としていたプレゼンがすべて台無しになってしまいます。とはいえ、どのような質問が飛び出すかは予測できません。

それをカバーするには、考えられる限りの質問を想定しておくべきです。質問されてあたふたするのはそれが想定外だからです。明らかに準備不足です。自分一人ではなく社内のスタッフ全員に協力してもらって質問を想定し、それに対する答えを用意しておかなくてはなりません。

不幸にして、それでも想定外の質問が出たときは、「申し訳ありません、その質問に対しては想定していませんでした」と即答しましょう。そして、時間が許せば明日にでも回答させてくださいと続けるともう一度訪問するチャンスを得ることにもなります。

 

 

プレゼン後のフォロー

コーディネーターたる営業マンは、プレゼンが終わればそれで一区切りつくわけではありません。プレゼンは通過点の一つにすぎません。それが終われば次に控えているものが各種あります。

まずはサンキューメールです。クライアントの状況によって違うでしょうが、連名にする場合は役職の上位の人から順に氏名を書き連ね、プレゼンというチャンスを与えてもらったこと、貴重な時間を費やして耳を貸してもらったことに対してお礼のメールを送ります。タイミングは早ければ早いほどいいと思ってください。できれば帰社してすぐ、遅くとも翌朝の仕事がスタートする時間までには送っておきましょう。

 

個人的には成功・失敗にかかわらず反省して、どこをどうするべきだったかを記述しておき、次のプレゼンに備えておきます。また、先延ばしにした回答はすぐに処理して、すぐにでもクライアントへ提出できるようにしておかなくてはなりません。

大切なのはこの先です。先方の担当者を早い機会に訪れ、さまざまな打ち合わせを進めます。プレゼンに対するクライアント側の反応、今後はどのように進行させるか、クライアントの発言から得た新情報への対応などしなければならないことはたくさんあります。

 

クライアントの動きを予測する

プレゼンであなたの提案を聞いたクライアントはその後、どうするでしょう? 自社の商品の優れた点を売り込むためどのようなメリットがあるかをアピールした一般的なプレゼンの場合、高い確率で他社の商品と比較します。そして、他社商品の方がメリットがより多く認められたときはそちらとの商談を進めるでしょう。

また、こちらとの話を詰めたいという連絡があり、商品についてのさらなる解説を求められるかもしれません。そのような動きを知るためには、担当者との打ち合わせが大きな役目を果たします。

 

もっとも、コーディネーターとしての立場でプレゼンを行うと、こちらが想定した以外の比較・検討がなされるケースは少ないと思っていいでしょう。ただ、解決方法としていくつかのパターンを紹介した場合は、当然のことながらその中での比較・検討が行われます。

この複数の解決策がある場合、コーディネーターたるあなたはどれが最も有力であるかはすでに承知していなくてはなりません。したがって、プレゼン後のクライアントはその方向に話を進めるであろうという想定に立って準備をしておきます。状況によっては、次善の策と判断した解決策が採択される可能性がなきにしもあらずですから、最有力のA案以外にB案、C案についてもある程度の準備が必要です。

このような手間を決して惜しんではいけません。そのときは無駄な努力に終わったとしても、クライアントを説得するための手法の一つとして検討したプロセスは、後々のために大きな財産となるのです。

 

次なる一歩

クライアントの動きを予測した時点で次の動きをスタートさせます。ある程度の期限を設けて次のステップへ進むように提案します。「もしこの方向で進行するようでしたら、そのモデルとして何通りかの具体案を○月○日までに提出させていただきます」と担当者に告げるのが一つの例です。

 

この時点での課題は、クライアント側にリードオフマンがいないケースです。あなたがコーディネーターとして優れた能力を発揮すればするほど、クライアントはあなたに依存してしまいます。その結果、社内ではリードオフマンが不在になる可能性が高いのです。上司が的確な指示を出し、今後は担当者が責任を持って進行させるようにという形になれば問題はない(100%そうだとはいいきれませんが)のですが、そういう発言がなければ担当者は指示待ちの態勢を続けてしまいます。そうなるといつまで経ってもその先に進めません。

そこで、コーディネーターの出番となります。スケジュールに沿ってどのように進行させるか計画を立て、それを承認・修正してもらうのです。プロジェクトにはリードオフマンが欠かせないことは皆さんよくご存じでしょう。リードオフマンのパワーが強いほどメンバーは結束してスムーズに進行します。

クライアントに対してその役を果たすのは厳しい面がありますが、譲歩するべきところは譲歩し、主張しなければならないところでは主張して前に進めてください。

 

最後は背中を押す

BtoBの場面では少ないのですが、BtoCではよく見られるケースに、最後の一歩をなかなか踏み出せないということがあります。理性では分かっているのですが、どうしても踏み出せないというパターンです。本来、日本人は優柔不断な人が多く、家やクルマなどの耐久消費財を購入する際はほとんど迷います。

特に、自宅を買うというのは一生に一度経験する重大な決断であり、ここで安易に決めていいのかという思いが大きく立ちはだかります。

 

迷いの主な理由は、多くの場合価格、品質、営業マンに対する信用度という三つです。家の場合だと30年以上にわたってローンを支払わねばなりません。補助金や融資制度、税制優遇措置などの助成システムをうまく活用すればもっと有利な支払い条件を設定できるのではないかという迷いです。契約したあとでもっと有利な条件が判明すれば後悔することになります。

品質を家に当てはめると駅からのアクセス、騒音や道路事情、買物や病院・学校などが便利かどうか、将来の見込みなどでしょうか。産業廃棄物処分場や暴力団事務所が近隣にあるのも困ります。実際に住んでみないと分からないものもいろいろあります。

 

営業マンに対する信用度は、端的な例としては手付金の持ち逃げです。この類いの犯罪は絶えることがなく、しばしばマスコミを賑わせるため買い手としては常に用心しているというのが現状です。コーディネーターとして動いてきたのならこの心配は不要でしょうから、この点にはもう触れないでおきましょう。

顧客が迷っているときに注意しないといけないのは、決して急かさないことです。セールスマンなら一気に契約までもって行きたいところでしょうが、コーディネーターなら最終的な判断は顧客に任せましょう。だからといって、弱気になる必要はありません。顧客のためになると思えば堂々と主張するべきです。客観的な立場で顧客の利益を守るのです。

 

最終段階では理性より感情

人間というものは不思議な存在で、大きな判断を迫られると理性より感情を優先してしまいます。いい例がイギリスのEU離脱を国民投票で決めたケースです。離脱すれば経済的な損失が大きいことが明らかに分かっているのに、移民やエリート層への怒りを優先させたのです。

これはなにもイギリス国民だけに限ったことではありません。それも人間に限らない、生き物が持つ生存本能だといっていいでしょう。平時においてはじっくり考えて冷静に判断する余裕があっても、緊急時には即座の判断が求められます。宿泊していたホテルで火災が発生して、廊下はすでに火の海という状況では状況を冷静に判断するという時間の余裕はなく、判断材料もありません。

 

そのようなとき、最終的な決断をするのは他人の言葉であり、そうでなければ自分の直感です。窮鼠猫を噛むという言葉がそれを端的に裏づけています。逃げる余裕がなくなれば適わない相手と分かっているのに戦うしかないのです。

顧客が最終的な判断を求められている状態とは、まさにホテルで火災に遭遇したときと同じです。救い出されるのを待つか、それとも廊下に出て自力で脱出するか、さらには他の手段を見つけるかという状態です。この場合、往々にして理性よりも感情に訴えた方がいい結果を生みます。

 

新しい家、クルマを手に入れることによって家族全員がハッピーになり、今よりも数段素晴らしい生活を送れるようになるというのがその典型的な例です。顧客が本当に求めているのは新しい家、新しいクルマなのではなく、新しい家、新しいクルマによってもたらされる家族の幸せなのだということに気づかせてあげるのです。このとき、信頼しているコーディネーターの言葉は決断を促す大きな力となるでしょう。

 

人間とは言い訳がほしい生き物

最終的な決断を迫られたときの顧客の行動は感情に支配されやすいとお話しましたが、このとき平行して注意しなければならないことがあります。それが言い訳です。顧客は購買行動の最終段階に至ると買う言い訳、または買わない言い訳を思いつき、それで自分の行動を正当化しようとします。

 

平常であれば、自分の行動なのだから自分で決めればいいのですが、顧客の収入、または現在の財産から見て一定以上の金額に達するとこの言い訳が必要になってきます。○○だから買おう、◇◇だから今回は買わないでおこうというパターンです。人間の行動は快楽と苦痛に支配されると前述したように、これを買いたいと思った時点でも買わない言い訳を思いつくのです。

その○○だから、◇◇だからというのは、はっきりいってこじつけ的な部分がかなりあり、まず他の人には通用しないものです。これも感情的な色合いがかなり強いといっていいでしょう。

 

買わない顧客には買う言い訳を提示する

「必要だから買う」と「ほしいから買う」は同じではありません。前者はニーズと呼ばれるもので、なければ困る、だから買うという性質ものものです。購入に際しては客観的な判断をして、できるだけ安価な商品を求めようとします。対して、後者はウォンツと呼びます。自分がほしいから無理をしてでも買いたいという欲求に動かされます。これは主観的な動機によるもので、だからこそ言い訳が必要になるのです。

理性では必要だと分かっているのに、どうしても最後の一歩を踏み出せない顧客に対しては、この「買う言い訳」を本人に代わって提示することもコーディネーターとしての役目の一つになります。つまり、ニーズをウォンツにするのです。顧客やクライアントのことを誰よりも知っている存在であるコーディネーターなら、どんな好みがあるか、どんなものを欲しがっているかはすでに承知しているでしょう。このレベルの言い訳では行動に移さないのなら、さらに高いレベルの言い訳を代弁してみましょう。

 

言い訳をデータベースにしておく

消費者心理として言い訳は常について回ります。したがって、あなたがコーディネーターを続ける限り、それは避けられないものとして対処しなければなりません。どのような言い訳についても対応できるように準備しておくということです。

概ね、買わない言い訳にはいくつかのパターンがあります。それは次のようなものです。

①価格が高い
②自分には決定権がない
③今でなくてもいいのではないか
④他の商品が気になる
⑤これがベストだという確信が欲しい

業種や商品の種類によってはほかにもたくさんあるでしょうが、代表的なものとしてこの五つを挙げておきましょう。自分の経験や同僚の意見、さらには上司からアドバイスをもらって、これらの言い訳にはどのように対処すればいいかを前もって用意しておきましょう。ただ、顧客がそれを言ったときに切り返すという話法は感心しません。

 

かつて、営業話法の一つとしてイエス・バット法というスタイルが大勢を占めていた時期がありました。顧客の言葉に対して「はい、その通りです。しかし……」という切り返しで自社の商品を売り込むやり方です。

その後、これでは反感を買う可能性があることから、イエス・アンド法「はい、そうです。だから……」に変更する空気が強くなりました。しかしと否定するのではなく、だからと受けるというやり方ですが、結果としては変わらず、顧客が自分で決めたという印象を拭うことはできません。

 

顧客の意志を最優先させるなら、置かれた立場を考えてどのような言い訳が出てきそうかを予測して、話の合間にその対処をちらりと覗かせてください。奥さん(あるいはご主人)の意見を尊重している顧客には、今度は奥さんとご一緒に話をさせてください、または電話で奥さんのご意見を聞かせてくださいと伏線を敷いておきます。

もっと安い他社の商品が気になっている顧客には自社商品の優れている点を訴え、ほかに安いものもありますが性能や耐久期間を考えるとこちらの方がずっとお得ですとさらりとかわしておきます。

 

契約後は頼りにされる存在になる

幸いにして契約に漕ぎ着けたとしましょう。その時点で多くの営業マンは一つの仕事が終わったと感じます。心は次の見込み客に向かいます。モノを売るのが仕事であるセールスマンならそう考えるのが当然かもしれません。売ってナンボの世界に生きているからです。

 

しかし、顧客の立場になって考えてみてください。契約していよいよ商品が納入されるのを待つ段階になると、テンションが最高に高まります。クルマの場合、人気車種であるほど納車までの間が長いのが普通です。家の場合は休日のたびに訪れて進行状況を確認したいのが人情というものです。その間、コーディネーターからの連絡がまったくなく、顔を出すこともなければ、それまで築いた信頼関係は一挙に崩れてしまいます。

契約に至るまでは「また来たか」と思われていたかもしれません。しかし、ひとたび契約が結ばれると頼りにされ、もっと足繁く通って欲しいと願うようになるのが常です。このように、両者の思いには往々にして大きなギャップがあります。

 

新規客を開拓するエネルギーの十分の一

契約に至った顧客、クライアントとは強い信頼関係を結ぶことができています。そこまでの信頼関係を築くのにあなたはどれだけのエネルギーを費やしたでしょう? それなりの手間と時間をかけているはずです。それを一挙に霧消させるのはもったいないと思いませんか? 新しい見込み客の信頼を得るのに比較すると、十分の一以上の少ない手間で強い信頼を持続できるという人もいます。

商品の種類によってはメンテナンス、インストラクターは別の担当者が受け持つこともあるでしょう。しかし、コーディネーターであるあなたが顧客との太いパイプである事実は変わりません。商品が納入されるまではもちろん、納入後もパイプであり続ける必要があります。そのことによってリピーターになり、新規客を紹介してくれる窓口にもなってくれるのです。

 

アフターフォローでなすべこと

商品が納入されたあとのコーディネーターの役目はなんでしょう? この点を無視、または気づかずにアフターフォローをおざなりにしている営業マンが少なくありません。各フェーズにある見込み客のフォローもしなければならないでしょうが、あなたを信頼している顧客も同じくらいフォローしなければなりません。

その一つが、新しく納入した商品についての意見・感想を聞くことです。導入したばかりだとまだ使いこなしていない段階でしょうから、よく分からないという意見が多いでしょう。そんなクライアントに対してはいろいろなアドバイスが必要になります。

 

他の社ではこういう使い方をしていますという情報も役に立つでしょう。同時に、同じ商品を他の社に紹介するときの大きな参考ともなります。許可を得ることができれば、○○さんも使っていますという実例として紹介してもいいでしょう。

回数は少なくなっても定期的に訪問していればさらに内情に詳しくなるはずです。どのような情報なら喜んでくれるかが判断できるでしょうから、日常からそれを集めておけば訪問時の話題になるし、あなたに対する信頼度もますます向上すると思われます。将来的にはもっと高い次元の課題に対する提案も可能で、貢献度はさらにアップすることは間違いありません。

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スポーツでも、芸道、華道、茶道、武道などにおいても、「基本の型を反復する」ことは大変重視されます。基礎ができているから創造的な仕事ができるようになり、基本が身についているから応用が利く。何でもそうですよね。ドラゴンボールの悟空だって、修行する時は腕立てや腹筋と基本からするわけです。それで基本が身について、はじめて「パワーアップしたカメハメ波」ができるわけです(笑)

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ABOUTこの記事をかいた人

松本 泰二

1978年12月 東京都練馬区生まれ。O型。アイデア創出の支援を専門にアイデア創出戦略家として活動。ほぼ毎日、誰かとブレストをしています^^。ほぼ毎週、起業アイデアを出すワークショップを開催しています。