お客様が価値に納得すれば自然と買いたい気持ちになってくれる

マーケティング

From:松本泰二

人は、幸福や快適さを求めるのは当然のことで、これを達成するために努力しています。したがって、恐ろしい物や怖い物には絶対に近づかないかと思うと、そうでもないのです。

人は怖い物見たさがあって怪談話を聞いたり崖の縁から下を見下ろしたりすることもあります。もちろん、性格や好みによってやや臆病だったり慎重な人は出来るだけ避けようとするかもしれませんが、冒険心や好奇心が旺盛で強烈な刺激を求める人もいます。

 

刺激を求める人

例えば、バンジージャンプで高いところから飛び降りたり、体を上下左右に揺さぶられる絶叫マシーンに乗って快感を覚える人も少なからずいます。

また、個人が一人だけで単純に楽しむわけでなく、仲間と一緒に騒ぐことによって快感が倍増します。恐怖に立ち向かう勇気を他人に誇示したり、不安や恐怖感を共有してワイワイ騒ぐことによって仲間意識が育まれます。

 

幽霊屋敷などに仲間と入った場合には一寸したことでも大げさに怯える仕草をしても、一人で入った場合にはほとんど反応しないで通り過ぎることがあると思います。

次々と新しい絶叫マシーンを導入して話題になっている遊園地などはこのような人がいるからこそ商売として繁盛している訳です。

 

ビジネスも人と同じように利益や成長を求めるのは当然で、後ずさりすることなく少しづつでも堅調に成長するのが当然だと思います。

しかし、現実には景気には波があるのが当たり前で、最近はグローバル化によって地球の反対側で起こったテロや政治不安が経済にも影響して、為替相場や株価が急に変動したり、石油や原材料の値段が上下します。

このようなことで、これまで好調だったビジネスが突然苦境に立たされることもあります。

 

遊園地の絶叫マシーンで体を上下左右に揺すぶられるようなものです。ただし、絶叫マシーンでは安全が保証されており通常は事故が起こることなく楽しむことができる訳ですが、ビジネスの世界では倒産することは珍しくなく苦境に陥ったときには先の見通しも立たなくなります。

景気が停滞あるいは下降するような経済的苦境下では、大会社の経営者でも自営業者でも自分のビジネスを安定させ盛り上げるために躍起になって様々な対応策や新しい企画を立てたりします。

 

方策が空回りし逆効果

しかし、余りに頑張りすぎると、方策が空回りし逆効果になることがあります。「何とか売り上げを伸ばそう!」、「何とか利益を出そう!」として無理なことを行うと、ますます苦境になって負のスパイラルに陥る心配もあります。

強引な売り込みや詐欺まがいな販売を行ってお客様の反感を買ったり信用を失うと、商売が成り立たなくなります。無理な大幅値引きをやってお客様を集めようとしても、お客様は商品の信頼性に疑問を持ったり裏に何かあるのではと不信感を抱きます。

 

また、人間的心理として、無理強いされると反発したくなるところがあり、「買え買え」と押し売りされると逆に買う気が失せてしまいます。

お客様は、自分が必要とする品物あるいは自分の好みに合った品物を、懐具合や予算に合わせて必要な時に買うのです。説明が魅力的でセールスがどんなに上手でも、いらない品物を買う人はいません。万が一、口車に乗せられてつい買ってしまった人も、返品したり次からは警戒するようになります。

 

逆境においても売り上げを上げるには

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それでは、景気が良くない逆境の状況においてもお客様を集め売り上げを上げるにはどうすれば良いでしょうか?前に指摘したことと逆のことをやれば良いのです。先ず、マーケティングをしっかりと行い、お客様が必要とする品物、関心を寄せる商品を開発するのです。

 

そして、自分の取り扱う商品が本当に良い物であることを自信を持ってお客様に伝えるのです。売り手側が商品をお客様に押し付けるのではなく、商品の価値に自信をもって説明し知ってもらうことが大事です。

 

焦らないこと

お客様が商品の価値に納得すれば自然と買いたいという気持ちになってくれます。最初に述べたように、押し付けられると逆に反感を抱きます。したがって、売り手側は今すぐ売りたいという気持ちに焦らされることなく、今買ってくれなくとも将来買ってもらえればと心の余裕をもって接すれば良いのです。目先の売り上げにとらわれて焦らないことです。

 

景気が悪くなって売り上げが落ちると、経営者や自営業者は先の見通しに不安や恐怖を感じて焦りがちになります。しかし、売り上げが落ち続けることなく、次第に回復して成長した例はいくらでもあります。

商品に自信をもって焦ることなく、肩の力を抜いてお客様に接していれば、お客様も買いたい気持ちを忘れすにおり、徐々に売り上げの伸びるときが来ます。

 

絶叫マシンに乗っている人を観察すると、目をつぶったり顔を引きつらせて恐怖におののいている人もいれば、余裕を持って目をしっかり見開いて景色を見ながら上下左右に揺すぶられるのを楽しんでいる人もいます。

ビジネスにおいて景気が大きく変動しようとも、焦ってお客様にやたらと強引に商品を売り込もうとせずに、自身をもって行動すれば余裕ができ、お客様に買いたいという気持ちを失わさせることなく、ビジネスの成長につながってゆくのです。