From:松本泰二
最近は電車やバスに乗るとほとんどの人がスマホや携帯電話を手に持って、インターネットを見たりゲームに熱中しているのが当たり前になっており、以前の通勤電車では文庫本を読んだり、ウォークマンで音楽を聴いている姿が見られたのが懐かしく思われるほどです。
また、電車内でスーツ姿の年配サラリーマンが漫画雑誌を夢中で読んでいる姿を見かけるのも珍しくなく、一昔前は奇異な感じがしたり、活字離れや漫画の弊害が憂慮されたのが不思議なくらいです。
逆に、今では漫画はアニメとともに日本の代表的なサブカルチャーとして認識され、秋葉原や池袋の乙女ロードと呼ばれる街では漫画、アニメ関連グッズやアイテムを扱った店が密集しており、若者やオタクの象徴となっています。
欧米などの海外でも日本の漫画やアニメは人気があり、漫画を通して日本語を覚えたり、日本の文化に興味を持って来日する若者もかなりの数になっています。
さらに、一見すると難しそうな株、経済やビジネスの説明書あるいは会社の研修資料やマニュアルを漫画で作成することも見かけるようになってきました。このような状況になると、活字だけの本を読む機会が益々少なくなってきて、活字離れに拍車がかかります。
漫画はどうして人気があるのか?
文字だけの本では、文章の行間に隠された趣旨や表現された情景を推定したりイメージを思い描いたりする必要がありますが、漫画はイメージによる表現で多くの情報が直接入ってくるため、苦労して考えなくともすんなりと頭に入るからです。
このため、漫画ばかり読んでいると自分自身で背景を考えたりイメージする力が衰える等の弊害を心配する声も出てくるわけです。
漫画家の側から見たらどうでしょうか?
このような心配は漫画の読者に対するものですが、漫画を書く立場の漫画家の側から見たらどうでしょうか?漫画の読者に及ぼす悪影響の心配と逆のことになるのです。漫画家は、読者が漫画のキャラクターやストーリーに引きつけられ、連載漫画であればこの次の発刊が待ち遠しいと思ってもらえるような多くのファンを捉えることを目指します。
そのためには、読者が漫画を気楽に読むのとは真逆に大変な努力を重ねるのです。読者が興味を寄せそうな題材を選んでストーリーを練るために、様々な資料を集めたり大量の本を読んで情報を蓄えるのです。
さらに、自分なりのイメージを思い描き、人の僅かな表情の変化や、微妙な感情や背景を表現したりして、読者に伝わるように工夫するのです。
また、社会の出来事や時流の変化によって読者の関心事や興味も変化するため、新聞、雑誌など様々な媒体に目を通し、漫画家自身が読者と同じ目線で捉えて共感したり発想したり感覚を養うことが必要です。このように、活字離れの元凶のように言われる漫画ですが、それを作り出す漫画家は大の読書家であるわけです。
読者と漫画家との関係は、顧客と経営者との関係にも共通する
読者と漫画家との関係は、顧客と経営者との関係にも共通するところがあります。経営者が商品を開発し利益を得るためには、マーケティングを行い、顧客が欲しいと思う商品を把握し、開発した商品をお客様に知ってもらう必要があります。
漫画の読者が漫画に共感し、メインキャラクターのファンになって次の発刊号のストーリーの展開が待ち遠しくなるように、顧客が商品の性能や特徴に共感し、ファンとなって次に発売する商品も購入してもらえるような関係を作ることが大事です。
経営者が顧客との関係をつくる上で必要になるのが顧客とのコミニュケーションになりますが、コミニュケーションをスムースに取るためには、漫画家と同様に、顧客と同じ目線で共感したり発想したりする感覚を養うことが大事です。経営者と顧客との間に距離が有り、顧客の感情が伝わってこなければ顧客を捉えることができないのです。
それでは、このような感覚はどのようにして養われるのでしょうか?
漫画家と同様に、資料や本、あるいは新聞、雑誌など、読書を通して自らの資質を高めることも一つです。インターネットで、「経営者 読書」のキーワードを入れて検索すると、ビル・ゲイツ、孫正義、柳井正など著名な経営者が読書家だったことを解説している記事や、有名企業の経営者の愛読書を紹介した記事などが数多く見られ、これまで述べてきたことの正当性が裏付けられた気がします。
読書により経営者の資質が高まれば、自然とそれに対応した資質の高いお客様が集まるようになって、商品のファンになって息の長い関係が続くのです。
大勢のファンがいる漫画家のように、経営者のビジネスも多くの顧客に親しまれ、経営が安定して永続することが期待されます。