人間の活動や繋がりに伴って共通の価値観を育み独特の文化が築かれる

起業

From:松本泰二

インターネットの普及に伴いグローバル化が一気に進んで、世界情勢は凄まじく変化しており、ビジネスの世界も例外ではありません。つい最近も、イギリスの国民投票でEU離脱が可決されると一時期急激な円高や株価の暴落が起き、今後の動向も不透明です。

また、スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」が配信されるとスマホを手にした人々が外に繰り出し、集客に利用しようとする商店や地方時自体まで現れています。このように様々に変化する状況で、消費者のニーズも変化しており、起業家や経営者はマーケットリサーチを行って売れる商品を把握し、価格設定や付加価値を付けるサービスなどのビジネス戦略を対応して変える必要があります。

 

集客方法も一昔前はテレビCM、新聞や雑誌などの限られた媒体でしたが、最近はパソコンやスマートフォンを介したSNSや動画など多岐に亘っており、昔ながらの方法では取り残されてしまいます。

さらに、アマゾンや楽天市場などのネット通販が急速に広がってきており、消費者は値段や商品の特徴をインターネットで比較・検討する様になって、商品を販売する手段もどんどん変化しています。

 

売上げを増やしていくには

このように会社間の競争も益々激しくなる状況で、売上げを増やし事業を拡大させるには、何が大事になってくるでしょうか?販売や顧客とのコミュニケーションを図る具体的な手段や実践的な計画などの戦術はその場の状況に合わせて柔軟に対応する必要があります。

しかし、これだけでは目先のことに振り回されて体力を消耗してしまいます。そこで、目標を達成するための総合的、長期的な経営戦略(ビジネスモデル)が必要になってきます。成功したときのやり方にいつまでも固執していたのでは時代の変化に取り残されてやがて衰退してしまいます。

 

変えてはならないもの

この様に、事業展開あるいは会社経営においては「変えていかなければいけないもの」がある一方で、基本的には「変えてはならないもの」があります。それは会社の文化、すなわち「企業文化」です。

「企業文化」はその会社がもつ価値観であり、経営理念やビジョンが反映されて現れます。また、「企業文化」は社長あるいは創業者の価値観も反映され、社員にとっては、給与や処遇とは別に、如何に気持ち良く働けるか等仕事に取り組む環境で、考え方や行動に影響します。

 

順調に業績が伸びている会社は独自の企業文化が有り、それを大切にしています。例えば、サン・マイクロシステムズの最高技術者・執行役員、Googleの会長・CEOやアップル取締役などを歴任したエリック・シュミットは様々な名言を残していますが、「重要なのは、グーグルの文化を維持すること。グーグルの文化とは、ユーザーを最優先し、製品の質と操作性を絶えず向上させること」(インターネットサイト、名言DBより)と述べています。世界中から優秀な人材を集めて才能を引き出しGoogleを大躍進させた背景が分かるような気がします。

 

2016年2月23日に公表されたアメリカの消費者団体専門誌「コンシューマ・リポート」の自動車ブランドの総合ランキングで、アウディに次いで富士重工業のスバルが2位になりました。

富士重工業は日本の自動車会社の中では売上げが上位の方ではないのですが、戦前は航空機を造った技術者の精神が受け継がれ、水平対向エンジンや4輪駆動車などの独自の技術を磨き上げてきた企業文化がしっかりと引き継がれていると考えられます。

 

一方、対極的に話題になったのが、軽自動車の燃費測定を定められた方法で行わないで問題となった三菱自動車です。同社は10数年前にもリコール隠しが問題になったことがあり、ようやく信用を回復しかけてきたところに再び信用を落としてしまったのです。同社は名門会社と思われていましたが、企業文化がなかったことが暴露されました。

また、トランジスタラジオやウォークマンなど独自の製品で世界的なブランドとなったソニーや総合家電製品で世界に躍進したパナソニックは最近影が薄くなっています。

 

これは、偉大な創業者の個性的な経営理念によって独自の企業文化が築かれて市場で独特の存在感を示していたのですが、創業者や創業者に関わりのある人物がいなくなるにしたがって、企業文化が薄れてきたためと考えられます。

 

成果主義を唱える企業

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ところで、年功序列と終身雇用制度は戦後日本の高度経済成長を支えてきましたが、バブル崩壊と呼ばれる景気後退が始まった頃から成果主義を唱える企業が出てきてマスコミでも話題になってきました。

年功序列と終身雇用制度の元では社員の会社に対する帰属意識が高く、企業文化も従業員に滲透していたと考えられます。ところが、成果主義では社員と経営者はお金(賃金)だけで結びつけられる関係となり、社員同士でも競合しており、お互いに希薄な関係であるため、お金以外の共通の価値観が生まれることもなく企業文化などは育たないと考えられます。

 

年功序列制度も事なかれ主義で業績が停滞したり、賃金が安い若者が流出したりする等の欠点がありますが、前述したような成果主義の問題のために、年功序列と終身雇用制度が再び見直されてきています。

企業でも国やその他の組織でも、そこに所属する人間の活動や繋がりに伴って共通の価値観を育み独特の文化が築かれます。経営者や起業家は、自分の会社だけの独特の個性的な文化を大切にし、社員と意識や理念を共有することによって他社と差別化したUSPを確立してビジネスを進展させることができるのです。