起業はトップで99%決まる! 自社をデューデリジェンスしてみよう

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From:松本泰二

経済誌のフォーブスジャパンが発表した「日本の起業家ランキング2018」でランキング入りした10人のスタートアップ起業家を見ていくと、誰しも行動力とリーダーシップに優れた人物と言えるでしょう。ラクスルの松本恭攝氏と同率1位の三輪玄二郎氏は、ノーベル賞受賞前の山中伸弥先生と出会い、アメリカ国防省まで関わる現在の企業を作ったことでも知られています。

 

では、あなたが投資家ならば、1位から10位の企業に投資をしたいと思いますか。大多数の人は興味があると答えるのではないでしょうか。ランキング入りした企業の主な株主を見れば、三菱UFJキャピタル、グローバルブレイン、サイバーエージェント、メルカリなどそうそうたる顔ぶれです。

 

あなたがこれから起業する企業は将来的には、株主や投資家が出資をしたいと思える企業になるビジョンが見えていますか。

 

自社をデューデリジェンスしてみよう

物事を成し遂げるには、ビジネスでも恋愛でも、スポーツ、遊びでも何でも客観性が重要。

何気なく視聴したYouTubeの動画でも、主体性の強い作品より視聴者のことを考えて作られた客観性があるものの方が見やすく、面白いと感じるのではないでしょうか。

 

早すぎる字幕映画より、目で追える字幕の方が見やすいですよね。

 

起業においても同じことが言えます。

例えば、単純な商品の売り買い、土地の評価はどうでしょう。

相見積もり、目安の価格を比較すれば、客観的な価値判断ができるでしょう。

 

しかし、会社の価値を客観的に判断するには複雑になってくるので、難しいですよね。

 

「M&A」、「企業再生」の増加とともに、企業の実態調査や価値判断の重要性が広がりました。そこで、自社企業を買収や投資をするつもりで、デューデリジェンス(全体調査)をしてみましょう。

今まで、見えてこなかった問題点、弱点などが驚くほど発見できるでしょう。

 

会社の6つの事業構造

デューデリ(デューデリジェンス)を実施するには、会社がどのような構造になっているのか知る必要があります。

会社と名が付くものであれば、どのような組織も6つの基本骨格でできています。

 

6つの骨格をそれぞれ見ていきましょう。

デュ―デリスキルを身に付けるためにも、基本になるので、ぜひ覚えておきましょう。

 

① トップ

会社はトップで99%決まると言われています。あなたの意識、考え方が会社に与える影響は絶大です。トップの考え方=社風と言えるでしょう。例えば、「社員が勝手にお客様をダマして販売しました」、果たして本当にそうでしょうか。不正を行わせたのは、トップだと子どもでも分かりますよね。トップであるあなたを客観視してくれるのは、セミナーの先生でも、同じ起業を目指す仲間でも、誰でもいいので、経営感覚の分かる人物にビジネスが法的に問題ないのか、意識が社会とズレていないのか質問してみましょう。この感覚はとても大切で、起業が軌道にのったあとでも、意見を客観的に言ってくれる人物を近くにおいておくことをおすすめします。成功したからといって傲慢になっていないか、強引な金儲けに走っていないか、親のように見守ってくれる人を大切にしてください。イエスマンで固めても良いことは何もありません。

 

② 事業方針

事業方針、戦略はライバル企業と比較してビジョンを見出せるものでしょうか。理想ばかりの目標値になっていませんか。目標達成のための順序が正当性のあるものか、方向性が現実とギャップがないのか。同業他社の成功事例と比較してみましょう。理念、戦略、ビジョン、目標を明確化できていないと、誰も投資はしてくれません。

 

③ 組織

組織体制は適正ですか。配置する人数に無理がありませんか。優れたビジネスモデルでも人材と組織がダメにしてしまう可能性があります。見極めが大切です。雇用後は、人材のモチベーションに敏感になってください。やる気が組織を大きくします。成長著しい企業は、社員のモチベーションアップに余念がありません。面白人事・福利厚生などで調べてみるといいでしょう。

 

④ ビジネスモデル

ビジネスモデルを販売、情報、物流、広告など細分化して展開が間違っていないかの判断が必要です。大きなポイントですので、十分に情報を集めて検討してください。起業したあとは、業績好調の場合は、市場に対して自社が優位なポイントをしっかりと把握してください。「何だか儲かった」、「私はビジネスの天才かも」では話になりません。儲かった理由を把握することで、一過性でないビジネスが展開できます。不調の場合は、分からなくても、意地でも不調の原因を探してください。その中で、始めて強み・弱みを明確化できます。

 

⑤ 財務

実際に起業してから業績と蓄積が財務として表れます。準備段階では、資金調達、助成・補助金の予定、投資がどのくらいなど資本に関わる部分を整理しておきましょう。

 

⑥ 環境

外部からの環境で方針やビジネスモデルを変化させることができるのか。対応できるのか。政府動向、国会答弁、経済情報、業界の動き、世の中のニーズや動向などに合った感覚を捉えていることが重要です。

 

会社の基本構造に照らし合わせてみて、いかがでしたか。自社に投資をしたいと思いましたか。将来性を見出せたでしょうか。「ノーマネーでフィニッシュ」と感じたならば、やるべきことが見えてきましたね。

 

ライバル企業から学べる発見

デュ―デリの基本を抑えたら、新規参入する業界で目立って活躍している企業を調査してみましょう。

 

なぜ、その企業が世に受けて成長が著しいのでしょう。

目ぼしい企業がなければ、先に紹介した「日本の起業家ランキング2018」の中から気になる会社を探し出して、デュ―デリをやってみましょう。

参考までに、1位~10位を紹介します。

※(企業名)

1位 三輪玄二郎(メガカリオン)

1位 松本恭攝(ラクスル)

3位 岡田光信(アストロスケール)

4位 寺田親弘(Sansan)

5位 南 壮一郎(ビズリーチ)

5位 坂野哲平(アルム)

7位 名越達彦(パネイル)

8位 長谷川潤(Omise)

9位 鶴岡裕太(BASE)

10位 尹 祐根(ライフロボティクス)

 

目指す企業の、

・長所や強み

・成長している部分

・時代にあっている部分

・お客様が求めているもの

を発見することができましたか。

発見することで、起業や開業後に自社で実行できます。

ぜひ、企業に対する客観的な眼力を付けてください。

 

企業の安全性

会社は、安定した資金で運営できるかが重要です。

これから起業する場合は、ピンとこないかもしれませんが、毎月20万円のサラリーで月10万円のローン返済。これは、感覚的に家計がピンチだと感じるでしょう。

会社においても、同じことが言えます。

 

創業、開業した場合は、感覚的ではなく数字でしっかりと把握できるようにしましょう。

安全性が簡単に分かる2つの診断方法を紹介します。

 

・自己資本比率=(自己資本額÷総資産)×100

総資産は貸借対照表の資産の部の合計額のこと。自己資本額とは、返済の必要のない自己資本。自己資本比率が高いほど、負債が少なく安全。低いほど負債が多く危険と判断できます。目指すべき数値は、40~50%。10%を下回ると倒産の危機です。

 

・流動比率=(流動資産÷流動資産)×100%

流動資産とは、1年以内に現金化できる資産。流動負債は、1年以内に返済する負債。単純に100%以上だと1年以内に返済が不能になる確率が低いとされています。

 

最後に

日ごろから経営者の目で近所の流行りの店や倒産してしまった会社を見ていると、発見や気づきがあるでしょう。iPS細胞から血液製剤の大量生産で起業した三輪玄二郎氏は、ダーウィンの言葉「生き残るのは強い種でもなく賢い種でもない。変化に適応できるものである」が気に入っているそうです。

 

市場は常に変化するもの。最新鋭の技術で作られた商品だけでなく、昔のファミコンやスーパーファミコンが再ブームもします。でも、同じ物ではありません。形を変えています。新しい物だけに目を向けるのではなく、古い物からもヒントは眠っています。

 

価値ある物だと発見する眼力を身に付けるには、デューデリが大いに役立ちます。

 

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