From:松本泰二
あなたが起業する前にじっくり考えてほしいことはいくつかありますが、大きな課題として「自分の本当のゴールを設定しておく」ことがあります。ここでは「本当の」という単語がキーワードです。
どうしてこれが大切なのか、それは自分の目的を見失わないためです。みなさんが実際に起業してみると、自分で思ってもみなかったことがたくさん起こります。考えもしなかったような大変なことをする必要があるし、反対に思いがけない楽しいこと、嬉しいことにも遭遇します。
そういった毎日を過ごしてがむしゃらに働いているうちに、本来自分は起業して何をしたかったのか?を忘れてしまう人がいます。
世間的に言われている「成功者」のイメージや、新しく知り合った人の考え方に簡単に影響されて、実際は特に興味がなかったはずのものを手に入れようとしたり。
またはそういうイメージも描けないままに、ただ一心に働き続けるだけだったり。
きちんとした目的を決めておかないと、物事を達成するのはとても難しいのです。だから、起業する前から「自分の本当のゴール」は設定しておきましょう。
けれどここで、設定自体が間違っているともっと大変なことになります。だからゴールの大枠になるような方向性を、一緒に考えてみましょう。
何を成功だと考えるべきなのか?
自分が起業するとなると、イメージする「成功」とはどういったものでしょうか?
わかりやすい成功は、お金を稼げることでしょうね。テレビでも「年商◯◯億の社長」などと紹介されている人が目立ちます。特にメディアに出て有名になると、成功しているっていう感じがしますね。けれどみなさんの目標は「お金を稼ぐ」ことでしょうか?それとも「テレビに出て有名になる」ことでしょうか?
もちろんお金については、見過ごせない点でしょう。目標として方向は間違ってはいません。けれど「有名になる」ことを目標にするのは、間違っています。
実際にテレビに出ている人は、自分の満足を得るためにテレビに出ているわけではありません。もしそういう人がいたとしたら、あまり稼げていないのではないでしょうか?実際には彼らは、「自分が有名になることによって、事業の更なる拡大を狙っている」だけです。有名になることは手段であって、目的ではないのです。
ではお金を稼いで事業を拡大すること、これが最終的な目標で間違いないでしょうか?けれど私は、これではちょっと足りないのではないかと考えています。
これは生き方の話になってしまいますが、人間が何のために頑張るのかというと、やっぱり自分と自分の周辺にいる人を幸せにするためだと思います。人間の全ての活動は、この点に集約されていきます。
みなさんが起業する時も、最終的な目標はこれなんじゃないでしょうか?
私たちが生きていく上では、色々と惑わされることがたくさんあります。本来の自分のやりたいことではないのに、魅力的に見えてしまうことです。お金を稼ぐとか有名になるとか、女性からモテたいなどの欲望です。これらは後からついてくるものであって、目的そのものではないはずです。
ここで、これらを手段として使う分にはかまいません。有名になってお金持ちであることをアピールしていけば、社会的な信用が得られてビジネスを加速させてくれます。女性にモテることも、知名度を上げるためには重要なことです。けれどそれを目的そのものだと勘違いしてしまうと、目標がブレてしまいます。
最終的な目標を成し遂げるためには、ちゃんと会社が儲けて、人に知られて、自分の周りにたくさん人が集まっていないといけません。それは間違いないのですが、それを直接追い求めていると勘違いしてしまう、ということを覚えておいてください。もしそれを勘違いしたままでいると、自分の幸福からは遠ざかってしまいます。
メディアで目立っている社長の収益性や、会社の成長度やモテ具合を見習うのはいいとしても、それがゴールではないことを肝に銘じていないと、人間はすぐに簡単な方に流されてしまいます。「何が自分と周囲の幸福か?」なんて難しいことを考え続けるのは、楽ではありません。だからわかりやすくて心地よい指標に逃げてしまいます。
けれどいくら会社が儲かったとしても、自分が不幸になっていては意味がないんじゃないでしょうか?周囲の人だって、起業をすることで不幸にしたいわけはないと思います。これはとても大事なことです。
人間の幸せとは何か?
私たちは自分が思っているほど、幸せというものについて何も知らないのではないでしょうか?
経営や起業についてはたくさん勉強してきた人でも、自分は何を幸せだと思うのかという点について考えたことがない人がたくさんいます。
けれど最近は科学的な分野で「人間の幸福について」の研究が進んでいます。一種のトレンドであると言えるでしょう。この点をきちんと考えておかないと、何を成し遂げても成功だなんて言えないのではないかと私は考えています。
経営についても同じことです。何が幸福なのかをしっかり把握しておかないと、成功させることはできません。経営を成功させたいなら、まずは人間の幸福について考えておくことが必要です。
人間の幸福について考える、と言われると堅苦しく感じてしまうかもしれませんね。けれど要するに、自分は何をしたら幸せになれるのか?について考えてみようということです。
ここで考えてみる人間の代表者は、まず一番よく知っている自分にしましょう。自分がどういうことで幸せだと思うのかをきちんと理解して、それから範囲を広げて周囲の人のことまで考えられるようになりましょう。
それでは幸福について考える時に、どうやって考えればいいのかをご紹介します。
ノートを使って、書き出して考える
幸せについて具体的に考えるには、いい方法があります。ノートに書き出していけばいいのです。書くという行為は、内容が漠然としていては始めることすらできません。文字にすることで、頭の中身を整理できるメリットがあるのでぜひやってみてください。
まずノートの真ん中に、横向きに線を引きます。そしてその線の上には「自分が幸せだと思うこと」、線の下には「自分が不幸だと思うこと」を書き出してみてください。
これは誰かに見せるものではないので、心のままに正直に書いてみましょう。制限時間はありません。ゆっくりと考えてみましょう。何か単語でもいいですし、物の名前でも形容詞でもかまいません。あやふやなイメージでも、何を書いているのかを自分で分かっていれば大丈夫です。
こうすることで、自分は何が好きで何が嫌いなのかはっきり分かります。この線が、幸せと不幸せの境界線になるわけです。
こういう作業をたまにやっておくと、自分の幸福を見失うことはありません。せっかくノートに書いたので、1ヶ月後や起業後に違うページで同じことをやってみてください。時間が取れない時は前に書いたものを見たりしても、改めて確認することができます。このノートを作ることは本当におすすめです。
このノートに前書いたものと、その時に書いたものを比べてみると違いがよく分かります。その違いは果たしていい違いなのか?何かを見失って、よくないものに囚われているから変わってしまった点じゃないのか?そういうところを確認することができるんです。
例えば「お金」が必要だと思うから上に書こうとして、「億万長者」と書いてみたとします。それだと見直した時に、多くの人は「ちょっと書きすぎたかもしれない。お金持ちくらいで自分は幸せだな」なんて思って自分を振り返ることができるでしょう。
でも前のページを見てみるとちゃんと「お金持ち」と書いていたりします。つまり、この間に何か惑わされることがあったと分かりますね。そしてその上で、どちらが自分にふさわしいのかを見極めることができます。
こういう違いをたどっていくと、自然と自分の好みや進みたい方向性が分かってきますね。これを応用すれば経営についてだって、利益最優先でいくのか?それとももっと違うものを求めるのか?など色々なことが分かってくると思います。
自分の目標、本当のゴールを見失わないためにこの方法はとても有効です。漠然と振り返るよりも、文字に書きだした方がいいことは分かってもらえたでしょうか。これはぜひ、覚えておいてください。
人生に影響を与えるストレス3つとは?
自分の幸福について考える手法を知ったところで、ここでは幸福を脅かすストレスについて考えてみましょう。一体何が自分を脅かしているのか、相手を知っていないと戦うことができないからです。
人生に大きな影響があるストレスは、3つあります。
1・お金についてのストレス
私たちが生活しているこの社会は、経済社会です。だから何をするにもお金が必要で、お金がないと生きていくことが難しいです。人生においてお金について思い悩む時間が、少しもない人はいません。
お金を稼ぐことについて悩み、お金の使い方に悩み、お金の増やし方に悩む。みんなその繰り返しです。これは、かなり大きなストレスになります。けれど避けては通れないことです。
そして起業をして経営者になれば、会社のお金という違う次元の問題についても取りかからなくてはいけません。自分のお金と会社のお金について悩むことになるので、最初は今の二倍のストレスがかかると考えておきましょう。
2・好きなことができないストレス
好きなことだけをやって生きていくのは、とても大変です。お金がなくて好きなことができないこともあれば、周囲の人のことを考えるとどうしてもできないこともあります。だから好きなことができなくて我慢する状態が続くわけですが、そうすると我慢がどんどんストレスになります。
3・人間関係についてのストレス
そして、人は一人では生きていけません。だから周囲の人と助けあって生きていくわけですが、相手によってはうまくいかずにストレスを感じることがあります。誰とでもうまくいけば理想ですが、相手があることなので全部は自分の思い通りにはいきません。
あらゆる会社で、人が辞めてしまう原因になるのはこの3つのストレスのどれかであると言えます。この3つがあると、仕事が嫌になってしまうことは仕方がないかもしれません。それではこの3つのストレスから逃れるために、目指していきたい3つの自由について考えてみましょう。
ストレスを感じなくなる3つの自由とは?
1・経済的な自由
まずは、お金の心配から自由になることが必要です。これは、安定して優れたビジネスモデルを持っていることにつながります。多額の収入ではなくても大丈夫ですが、とにかく安定していること、それが継続できることが大切です。そうすれば心配事が減ります。
毎月の支払い請求に悩むことから開放されると思えば、その気分は想像できるのではないでしょうか?経済的に自由であれば、大きなストレスから一つ開放されることは間違いありません。
2・行動の自由
自分が何をやるのかを、自分で決められる自由です。やりたくないことや意志に反することはやらなくてもいい自由は、私たちの気持ちをかなり開放的にしてくれます。自分の意志に反して行う仕事ほど、つまらないものはありませんよね。優秀なチームを持っていて自分が選んだ好きな仕事だけができるなら、仕事が楽しくなって辞めようと考える機会は少なくなります。
3・人間関係の自由
自分の周囲にいる人間を選ぶことができる自由は、楽しく仕事をする上で不可欠です。関わる人たちに価値を認めてもらい、こちらからも認める心地よい関係を作ることができます。できれば仕事相手だって、選り好みしたいと思っている人は多いのではないでしょうか?そういう自由も含みます。
こういった3つの自由を持っている人は、幸せな経営者だと言えます。では具体的にどういう経営者なのかとまとめて言うと、お金があって、好きな人と一緒に好きな仕事をしている人です。どうでしょうか、羨ましくなってしまう人が多いのではないでしょうか?
この3つの自由は、サラリーマンという立場では得ることが中々難しいかなと。経済的な自由は、ものすごく頑張って出世すれば人生の後半でなら達成できるかもしれません。けれど人や仕事を選ぶことは、出世したって難しいでしょう。会社の言うことを聞く姿勢が必要なサラリーマンでは、自分で選んでできることは少ないです。
では、この3つの自由を手に入れるためにはどうしたらいいか?
私は、起業するしかないと思っています。起業してしまえば、まずは3つのストレスを自分のコントロール下に置くことができます。ストレスをコントロール下に置いていなければ、自由はありえません。他人から指図され続けていては何一つ自由ではないからです。起業はもちろん責任が伴うことですが、責任さえ引き受ければとても自由がきくんです。これが、経営者をサラリーマンで大きく違う点だと言えます。
起業したらどうなりたいのか?
では、先ほどのノートを使ってもう1つ作業をしてもらいたいと思います。それは、「自分は起業してこういうふうになりたい」というビジョンを明確にする作業です。今までお話した点をふまえて、自分なりに考えてみてください。今度はノートを好きなように使ってかまいません。やはりここでも、漠然としたイメージではなく文字に書き起こすことが重要です。
今までただなんとなく「サラリーマンは嫌になったから起業したい」とだけ言っていた人は、ここで書く手が止まってしまいます。嫌だから、というだけではなりたい自分が見えてこないのです。
けれどしっかりしたビジョンを持っていないと、経営は必ず失敗します。自分の本当のゴールについて最初の方でお話しましたが、見失ってしまってはたどり着けるはずがありません。どういう仕事をしてそういうふうになりたいか?そのビジョンが自分の本当のゴールだと設定しておきましょう。その時に今まで幸福について考えたことや、さっきの3つの自由なども一緒に考えてみてください。これらは見過ごせない重要なパーツです。
ここでは、「書いたら必ず実現する」くらいの真剣さで書いてください。それを実現するのは自分ですが、決めたのも自分だということを忘れずに。起業前にこの作業をしていたら、自分の本当のゴールを見つめなおすことができるんじゃないかと思います。
また起業してからも、このビジョンは常に更新していくことが必要です。こうやってノートを使って、自分について考えてみることはとても重要なんです。
自分についてしっかり知り、明確なビジョンを持って、最短距離で起業を成功させましょう。みなさんにはぜひ、起業してたくさんの良いものを手に入れていただきたいと思っています。
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