本当に売れるものは顧客の声からは出てこない?

マーケティング

From:松本泰二

一生懸命マーケティングをして顧客の声を集めて、満足の行くように製品開発をしたのに、思ったような反応が返ってこないのはどうしてでしょうか?

実は、お客様は自らの求めるものを本当には理解しているわけではないからです。というのもお客様はマーケットのプロではなく、自らの欲するものを形にするための知識も経験も持ってはいないからです。

 

聞くのではなくてじっと見ろ

自動車のホンダ創業者の本田宗一郎氏は「お客さんに、『どんなクルマがいいですか』と聞くバカがいるか。お客さんは分からないんだ。聞くのではなくてじっと見ろ」とおっしゃったそうです。

この言葉は物事の本質をズバリ言い当てています。あなたが売り手側で、お客様に商品を提供する立場であるならば、自らがクリエイターであるべきなのです。お客様に新しい価値観を提供するのがその仕事です。

さらに顧客の声を聞いて、そのニーズをすべて満たすものを提供したとしても、お客様は「あ、そう」とすぐに飽きられてしまいます。

 

顧客中心主義

こうした顧客の意見を絶対と見ることを「100円のコーラを1000円で売る方法」の著者永井氏は「顧客中心主義」と呼ばれています。

市場が円熟している現代において顧客の声を絶対とする「顧客中心主義」では、他との差別化はほとんど図れず成功することはないと永井氏はおっしゃっています。氏のあげられるTVのリモコンの例はとても分かりやすい事例です。

 

顧客の様々な意見を聞きすぎたために、リモコンの表面はあらゆる機能ボタンでいっぱいになってしまい、どれも同じようなデザインになっています。

顧客側はというと、「使えるなら百均のリモコンでも構わない」と感じるようになり、わざわざ高いリモコンを買う必要を感じません。

 

顧客に必要とされる製品をどうすれば生み出すことが出来るのか?

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ではどうすれば本当に顧客に必要とされる製品を生み出すことが出来るのでしょうか?それは顧客の声を聞くのではなく、自ら顧客の目線に立ち、プロの目で状況を細かに分析することです。

マーケット調査をすると、顧客は「おしゃれで、ヘルシーで、エコな商品」を求めているという結果が出るかもしれません。しかし、実際に顧客が求めているのは「たくさん入っていて、満足感が得られて、気軽に食べられるもの」かもしれません。

 

顧客の目線に立って、物事をあらゆる角度から分析してみましょう。人々の行動を観察しましょう。多くの場合、私たちは提供する側の立場から物事を見てしまいがちです。しかし提供する側の目線から見えるものと、顧客の目線から見えるものとは、かなり違っていることもあるのです。

実験として自分の仕事の分野と全く関係の無いサイトを開いてみてください。そしてそこで感じる不満を取りだしメモしてみましょう。どうでしょうか?

 

提供者の側からすると、「いろいろなサービスや製品を比較出来るように沢山の情報を提供した」というサイトページから、顧客側のあなたは「情報が沢山ありすぎて大事なことが分かりずらい。情報を吟味し厳選する手間を惜しんでいるイメージ」を受けたということは無いでしょうか?

あるいはあなたが女性であれば、ショッピングに出掛けて、すごくおしゃれで個性的な服を見つけて、「素敵だなぁ」とは思ったけれど、それを着て街を歩いて人目を引くのは恥ずかしいと思って、もう少し普通目の、ある程度個性的でかわいいと思える服を選んだということは有りませんか?

 

人の行動を実際に観察する

効果的なのは人の行動を実際に観察することです。特定のひとをじっと観察すると間違われることがありますので、気を付けた方がいいですが、大半の人は特定の場面でどんな行動を取ることが多いでしょうか?

そしてその行動の背後にある動機を洞察してみましょう。出来ることなら相手に直接聞きましょう。顧客が商品を選ぶ際に、実際に気にしているのはどんな点でしょうか?自分たちは売りだと思っていたポイントが、実際には顧客にとって些細な点であったということはないでしょうか?

 

このように顧客の要望を集めて回るのではなく、むしろ顧客の立場に立って物事を見たり、顧客の行動を観察したりすることによって、顧客が言葉に出さない、あるいは自分で気づいてさえいない顧客の真の必要とするものを見つけることが出来るかもしれません。

まずは行動することが重要です。立ち上がって出掛けましょう。人々が歩く場所を歩き回ってみましょう。

 

そうして発見したこと、挑戦したいと思ったことは何でも挑戦してみましょう。やってみなくては結果は分かりません。これはダメだとあきらめる前に、まずは実行に移せないか考えてみましょう。そうすると思っていなかった場所で顧客の大きな反応を得ることが出来るかもしれません。