From:松本泰二
「最近の若者は....」と評する言葉は江戸時代あるいはそれ以前の書物や、海外でも古代の資料にも出てくるそうですが、10年ほど前から若い男性を評して「草食系男子」という用語がテレビ、新聞や雑誌で用いられるようになりました。
もちろん、全ての若い男子を指しているわけではなく、相手を尊重して争いを嫌い、人当たりがソフトで一見性格の良い男性ですが、高い目標を持って頑張って努力するよりはマイペースで楽に出来る範囲で済ませる傾向があり、恋愛などにも積極的でないような特徴の男性を評する時に使います。
ゆとり世代
同様に、10数年前から話題になっている用語として「ゆとり世代」があります。これは2002年度に改正された学習指導要領で「ゆとり教育」を受けた世代のことを言いますが、それ以前の知識を重視した詰め込み教育の弊害を改めるべく、教科内容を削減するとともに授業時間数を減らして土曜日は休みにして、競わせること避けて個性を重視し、考える力や生きる力を養うという教育を受けました。
ただし、学力低下を招いたなどの批判があって、2011年度に学習指導要領が再改定され「脱ゆとり教育」と称されています。ゆとり世代も既に社会人となって働いていますが、年配の社員からは,仕事が終わっていないのに定時で帰る、有給中にやむを得ず自宅に電話したのに出ないなどの苦言もあります。だたし、昔から時代時代に応じて新入社員を評価する表現が話題になりますが!
これらの「草食系」と「ゆとり教育」に相関関係があるかどうか分かりませんが、汗水垂らして頑張らない、個性を重視しマイペースであるなど、共通する特徴があります。
ところが、このような特徴は起業家や経営者にとって受け入れられないことと思います。起業家や経営者が会社を新たに立ち上げたり発展させるためには、失敗を恐れずに積極的に行動を起こし、血の滲むような努力を重ねる必要があります。ゆとりを持っておとなしく草を食しているだけでは、会社を立ち上げることは難しく、たまたま会社ができたとしてもたちまち競争に負けて倒産します。
運命の女神が好む人とは?
人の幸・不幸を左右する「運命の女神」は野心を持って失敗を恐れず、大胆に行動する勇敢な若者を好むと言われます。慎重になって積極的に挑戦することをためらい、棚ぼた式に幸運が舞い降りてくることを待っていても、「運命の女神」は振り向いてくれないのです。
戦国時代に群雄割拠する武将の中で、運を呼び寄せて快進撃した代表例が織田信長ですが、「桶狭間の戦い」に見られるように、その戦略は大胆な先手必勝でした。この戦いでは、織田側の兵数に比べ敵方の今川義元側には10倍もの兵が居たのですが、織田信長は地理的条件と丹念に集めた情報を分析して先手を打って奇襲したのです。
また、本能寺の変の後天下統一を果たした豊臣秀吉は、水攻めや兵糧攻めなど様々な手を打っています。さらに時代が遡りますが、源平合戦の時代に源義経は必ず先手を打つ戦術によっていろいろな戦いで勝利していました。
これらの例のように、先手を打ったり、これまでなかった様々な手を打つことは失敗することもありますが、大胆で素早い行動は準備が出来ていない相手の動きを封じて優位に立ち、「運命の女神」を振り向かせることになるのです。
先手必勝の優位性はビジネスにおいても同じです。慎重にして行動を起こすのが遅くなると、「運命の女神」は振り向いてくれないのです。
「運」は自分から働きかけて得られるもの
孫正義と言えば、携帯電話への参入、YahooJAPANの展開など次々と新事業を成功させ、また、つい最近はEU離脱を決めてポンドが暴落している英国の半導体設計大手アーム・ホールディングス社を巨額の資金で買収するなど注目を集めており、現代の日本の経営者を代表する存在です。
孫社長は前述したような事業展開を失敗を恐れずに驚異的なスピードで進め、常識的には何年もかかるような意思決定を次々に行っています。戦国武将で言えば、先手必勝ということになります。
また、家具小売り業界で驚異的に売上げを伸ばしている「ニトリ」を創業した似鳥昭雄の自叙伝「運は創るもの」では、貧しい家に生まれ苦労した少年時代、学校でいじめられ成績は散々だったこと、社会人になってから抱えた様々なトラブルを経て、「ニトリ」を創業し現在に至るまで興味深い話が語られていますが、本のタイトルに著者の人生観が表れています。
「運」は待っていても寄ってくるのではなく、自分から働きかけて得られるもので、これまで述べてきた先手必勝に通じるところがあります。
同様に、世界一のカリスマコーチと言われるアンソニー・ロビンズの「運命を動かす」という本でも、「重要なのは、実際に行動を起こすこと」で。草食系男子とは相対することが訴えられています。
先手必勝
これまで挙げてきた例のように、ビジネスにおいて成功するためは「先手必勝」が重要で、慎重なだけでは運命の女神が振り向いてくれないのです。
「先手」とは、これまで行われなかった未経験のことを実行するので、失敗する確率も高くなります。しかし、失敗を経験し次の対策を立てて新たに素早く挑戦できるため、ビジネスに大切なスピードも増して、成功の確率を高めることができるのです。
また、他社に先駆けて立ち上げた事業や商品開発が軌道に乗れば、その道の大御所として認識され、開発した商品はブランドとなるのです。