事例に見るポジショニング&リポジショニング

From:松本泰二

※2016年4月加筆修正しました。

前回は、商品を圧倒的に有利に展開するポジショニングついてお話しました。今日は、マーケットを分析し、自社商品をどこに位置づけるかを追求すれば販売戦略が有利に展開できるというのがポジショニングのメリットです。時代が移って消費者の好みが変化したり、競合品が登場したりして優位性をなくしたとき、もう一度ポジショニングを洗い直して新たなイメージをアピールするのがリポジショニングです。

どちらも、漠然とイメージすることはできても、具体的にどうすればいいのかが分かりづらい部分があります。そこで、実際にポジショニング&リポジショニングで実績を上げた例を紹介してみましょう。

 

個食時代に合わせたボンカレー

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かつて、食事は食材を買ってきて家庭で調理するという内食(うちしょく)がメインで、特別の場合に限って外食をするという習慣が定着していました。しかし、核家族化の傾向が強まって家族の単位はどんどん小さくなり、さらには独居老人が増え、また婚姻率が低下するといった理由で、一人で生活する消費者の割合が大きく増加しました。

それにともなって食を取り巻く環境も大きく変わっています。複数の家族が一緒に食べていた時代から、一人で食べる機会の方が多いという形態に変わってきたのです。いわゆる個食の時代です。

 

そのような社会情勢に合わせて登場したのが大塚製薬のボンカレーです。レトルト食品の先駆けといえるこの商品は、そもそも家族みんなで食べていたカレーライスを一人で気軽に食べるものというポジションに置き換え、一人で生活する消費者の大きな支持を受けました。

ご飯さえあれば簡単に食べられるとあって特に男性軍の支持は熱く、1968年に登場して以来、不動の地位を保っています。

 

働くママの応援グッズにイメージチェンジ

ボンカレーのTVCMとしては初代の松山容子以来、笑福亭仁鶴、王貞治、松坂慶子、比較的新しいところでは鈴木京香などが記憶に残っているでしょう。しかし、一般消費財であるにもかかわらず、ボンカレーは現在TVCMを打っていません。それでも売上は伸びています。

 

その秘密はなんでしょう?

2013年、発売してから45年経ったのを機に、大塚製薬は消費者のボンカレーに対するイメージをリサーチしています。その結果、認知度は非常に高いという結果を得ました。それを受けて、販売戦略の大幅な変更を行ったのです。商品を認識してもらうTVCMは発売直後には有効だが、45年も経過して非常に認知度が高いボンカレーについてはその必要がないと判断し、大胆な広告宣伝費カットを実行しています。

もちろん、単にTVCMをなくしただけではありません。それに代わるさまざまなマーケティングミックスを実行しています。

 

その一つがリポジショニングです。個食の時代に対応したパックされたお手軽食品として認知されたボンカレーですが、女性の社会進出を手助けするというポジションに置き換え、「働くママをサポートする」というイメージに切り替えたのです。媒体はウェブ動画で、これなら長い時間を使って商品の特徴をじっくり伝えることが可能です。

YouTubeでも視聴はでき、動画第一弾の再生回数は100万回以上に達したそうです。そして、TVCMを打たない状態が続いているのに売上は右肩上がりを続けています。

 

中食という位置づけの持ち帰り弁当

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単身者世帯が増加して一人で食べる機会が増えたという社会現象は、もう一つのエポックメーキングなビジネスを産み出します。それが持ち帰り弁当です。弁当とは携帯する食事であり、米飯を主食とする我が国では世界に類を見ないほど発展していますが、もともとは家庭で作る手作り弁当が主体で、駅弁に代表される「買い弁」は少数派に位置づけられていました。

ところが、1970年代にほか弁が登場し、状況は一変します。家庭で調理する内食(うちしょく)、店舗に出向いて注文する外食のどちらかであった食事形態に、中食(なかしょく)というカテゴリーを新設したのです。このポジショニングは見事でした。

 

調理されたものを買って自宅で食べるというパターンは、例えばコロッケを買って副食の足しにするという習慣は以前からあったものの、家庭で調理をする手間が不要という意味ではそれまでまったく見られなかったのですから。

注文して自宅に配達してもらう出前や仕出しというパターンは存在していましたが、これは数がまとまらなければなりません。その点、持ち帰り弁当は一人分でも気軽に購入できます。また、外食に比べるとはるかに安価です。こうして、持ち帰り弁当は一挙に広く認知されることになります。

 

持ち帰り弁当を一挙に拡大させたコンビニ

中食としての弁当を普及させたもう一方の旗頭がコンビニです。セブン-イレブンの1号店が1974年代に誕生して、コンビニはそれから瞬く間に全国に広がっていきました。ほか弁は注文されてから作ります。温かい弁当はそれだからこそ美味しいのですが、ある程度は準備しているといっても来店客が集中すると待たされることになります。

その点、コンビニで販売されている弁当は電子レンジで温めますから待ち時間はわずかです。勤務先などの電子レンジのない状況では非常に有り難い存在で、しかも他の商品が同じ店内で買えるのです。まさにコンビニエンス=便利です。

 

大都市の場合、100mも歩けば別のコンビニがあり、そこでも弁当を販売しています。コンビニに比べて数が少ない弁当専門店を求めて遠くへ行く必要はありません。首都圏でビジネスマンがランチタイムに外食しようと思えば行列を作らなければならず、昼休みの1時間では昼食にありつけないという事態も生じています。

コンビニの持ち帰り弁当ならそんな心配は無用です。単身者世帯のみならず、勤労者の昼食にまで波及し、コンビニの弁当は1軒で1日に20食から30食を販売したといわれます(90年代)。

 

持ち帰り弁当の多様化

持ち帰り弁当が大きなマーケットであることが認識されると、さまざまな業者が参入を始めます。当然、そこにはポジショニングが欠かせません。コンビニやほか弁のメニューはある程度限定されています。

ですから、空白を狙って今までにはないメニューが登場します。中華料理屋は中華料理をメインとした弁当を売り出しました。和食の店では略式懐石風、地元の食材を生かしたご当地弁当も売り出されました。また、ファミレスではテイクアウトメニューを打ち出しました。持ち帰り用の食事、つまり弁当です。

 

店舗を持たない販売形態も誕生しました。工場街や港湾エリアには販売店が少ないことから、車で弁当を運んできて路上で販売するというスタイルが定着しています。これは、店舗のないエリアを探して得たポジショニングだといっていいでしょう。

弁当の範疇から離れた高級弁当も生まれています。一般的な弁当の価格帯は400円から700円というところですが、それをはるかに超えた高級路線を行く弁当もあります。有名な料亭が開発したものや著名シェフの名を冠して2000円から3000円で販売しています。

 

企業のトップクラスが集まる会議後のランチや親戚一同が参加する慶事と利用シーンは意外に多く、予約しておけば配達してくれますから移動する必要はありません。

 

さらなるセグメントが要求される

弁当をメインとする中食市場は外食産業の1/4の規模に達しているといわれています。健康志向が普及して手作りを好む人が増え、また景気の先行きが見えないという情勢を反映して、今後は以前ほどの伸び率は期待できないと思われます。

しかし、ポジショニングによってはまだまだ期待できる業界であることは確かです。駅弁に対して空港では空弁を扱い始めています。プロ野球の公式試合では球場で球弁を販売しています。

 

高齢化がますます進行するのは確実ですから、減塩メニューや油分を抑えた弁当が要求されるようにもなるでしょう。若者向けの濃い味から薄味にシフトした弁当も開発されると思われます。さらに、買物に行けない独居老人のための宅配システムもますます定着していくのではないでしょうか。

 

牙城・吉野家を逆転したすき家の戦略

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拡大する中食に比べて外食の総売上は年々落ちてきています。しかし、的確なポジショニング&リポジショニングによって逆風の中でも実績を上げているところはあります。すき家もその一つです。

すき家の創業は1982年。牛丼業界では最大手だった吉野屋はすでに1968年にチェーン展開を始めており、1998年には全都道府県への出店を果たしています。そのため、すき家は吉野家との差別化を図るべくさまざまな戦略を取っています。

 

一つの例が郊外型の店舗展開です。それまでの牛丼屋は駅前のような繁華街に出店していましたが、すき家は車の利用客をメインターゲットにしました。これはファミリー層が来店しやすくしたものです。カウンター席だけでなくテーブル席を設けたのも同じ理由です。

 

それまでの牛丼屋は「早く、安く」がアピールポイントで、男が一人で入るものというイメージが強く、女性客や家族連れにとって敷居が高かったのでした。しかし、すき家のポジショニングは牛丼屋というカテゴリーの中ではまったく新しいものでした。

2000年代に入るとドライブスルーを始め、またショッピンセンターのフードコートにも出店しています。そして2009年、売上高で吉野家を逆転し、牛丼チェーンの最大手となったのです。もちろん、家族連れや女性層が来店しやすい価格とメニューであったことを抜きにしては不可能だったでしょう。

 

すき家躍進のもう一つの理由

ここで時代を少しさかのぼります。我が国では60〜70%のシェアを占める日本マクドナルドは、かつて価格を大幅に下げて業績を伸ばした時期がありました。いわゆるバリューセットです。そして、それまで単品で210円だったハンバーガーを130円に落としました。1995年には円高の影響で原材料の輸入コストが下がった部分を還元するべく、さらに80円までダウンしています。もっとも、このときは円安に戻った時点で再び130円に値上げしています。

 

衝撃的だったのは2000年の平日半額キャンペーンです。平日に限ってこの130円を半額の65円で販売したのです。可処分所得が減りつつ合ったビジネスマンはこれに飛びつきました。ハンバーガーは子ども・若者が食べるものと軽視していたのですが、この価格は魅力です。

ランチタイムには30代、40代のビジネスマンが行列を作るというシーンがあちこちで見られ、結果に気をよくしてキャンペーンは何度も延長されています。そのおかげで価格破壊の波は全国的に広がりました。

 

2001年、吉野家も並盛りの価格をそれまでの400円から一挙に280円まで落とします。松屋もすき家も追随せざるを得ず、これを機に大手三社の利益幅はどんどん減少していきます。2004年には狂牛病という大事件が発生して牛肉の関連産業はすべてダメージを受けるのですが、牛肉が復活したその翌年、牛丼並盛りの価格は380円と再び三社が横に並びます。その後、今度はすき家が280円に落とします。

それ以前の価格競争に加えて狂牛病で大きなダメージを受けていた他の二社は追随することができませんでした(その後、やはり同価格まで下げますが)。競合店がついてこれないという状況を見定めて、安い価格帯というポジショニングを突いたわけです。2008年を境としてすき家の店舗数はどんどん他を引き離します。低価格と店舗数の拡大。それがすき家の躍進を支えたもう一つの理由です。

 

価格戦争の結末は……?

基本的な質問をしましょう。商品を安く販売してなおかつ利益を上げるにはどうすればいいでしょうか? 皆さんには改めて説明するまでもないでしょう。原価を下げる。経費を下げる。この二点が主力です。

原価を下げるためには大量仕入れが欠かせません。すると、その大量の食材を消費するために店舗の数が必要になります。店舗数の拡大はそれを目的とするものです。

 

経費を下げるというのは人件費削減に向かいます。一時、マスコミを騒がせたすき家のワンマンオペです。オーダーを聞いて調理し、それを客席に届けて、食事が終われば洗い場に下げて食器を洗い、所定の位置に片づける。その合間には支払いなどの作業も入る。

これをすべて一人で担当するわけです。労働条件が悪いから続かないし、新たに応募もしても求職者はきません。そのため一人でやるしかないわけで、店舗展開を速やかに可能にするためすき家は極端な省力化を行ってはいたのですが、それにも限界がありました。

 

その隙をついたのが吉野家です。低価格路線で突っ走っていたすき家に対して高額商品で対抗します。2013年に販売を開始した牛すき鍋膳です。ご飯・生卵とのセットで580円という商品です。冬季限定ですがこの商品はヒットし、総売上を20%アップさせたといわれます。

すき家もすぐ同種のメニューを開発するのですが、牛丼に比べて手間がかかるため少ないスタッフでは処理できず、店舗の閉鎖はどんどん進行しました。

 

牛すき鍋膳はなぜ人気に?

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吉野家が取った戦略は次のようなものです。「早い・安い」という牛丼屋のイメージを「旨い・安い・ごゆっくり」に変更したのです。手軽に鍋料理を楽しむための固形アルコールで温めるため料理が冷めず、一人でもゆっくり食べられるというコンセプトを打ち出しました。それにともなって、新しく出店する店舗は従来のカウンターだけと違ってテーブル席を設け、家族連れでも楽しめるスタイルに変更しています。

 

このおかげで牛丼屋のイメージが一新されることになります。短い時間でさっと終わらせるのではなく、食事をゆっくり楽しみたいという人も満足できます。また、女性一人でも気軽に来店できるため新規客が増えたというのもあるでしょう。これは、かつてすき家がとったのと同じポジショニングです。

しかし、早い・安いというイメージでは家族連れや女性にアピールするのは難しいでしょう。少しは高くてもゆっくりしたいというのが家族連れや女性客の要望なのです。

 

外食業界に広まったチョイ飲み

現在、牛丼チェーンも含めて外食業界では一つの流れが生まれています。それが「チョイ飲み」です。飲むのはいうまでもなくビールを代表とするアルコール飲料です。それをファミリーレストランやファストフード店で飲むことをチョイ飲みと呼ぶのです。「チョイ」ですから腰を据えてガッツリ飲むわけではありません。軽く一杯というイメージです。

先鞭をつけたのは、これも吉野家です。吉呑みという名称で生ビール、焼酎、ハイボール、梅酒などを提供するようにしたのが2015年です。自店で扱っている牛肉をメインとしたサイドメニューも登場させています。

 

そして、このチョイ飲みは瞬く間に外食の他の分野にも広く波及します。ファミレス業界ではガスト、デニーズ、やよい軒、ロイヤルホスト、サイゼリヤ、餃子の王将、ファストフードではケンタッキー・フライド・チキン、フレッシュネスバーガーなども参入しています。さらにはスターバックスも始めています。

前述したように外食業界は全体の売上が年々落ちています。特に、低価格路線を走って客数の確保を図っているところでは客単価アップが頭痛のタネです。そこに現れたのがチョイ飲みですからすぐ飛びついたのはうなずけます。アルコールが加われば間違いなく単価はアップするからです。

 

お客にとってチョイ飲みのメリットは

ファミレスやファストフード店で飲むチョイ飲みはお客にとってどんなメリットがあるのでしょう?とにかく、単身者にとっては有り難い存在です。特に、女性にとってはそれが当てはまります。自宅に帰って一人で味気ない食事をするよりは、ゆったりと飲んで美味しいものを食べた方がいいに決まっています。

といって、オヤジだらけの焼き鳥屋やおでん屋に行く気はさらさらないでしょう。その店、ファミレスならテーブル席で飲む&食べるという行為を一件の店で済ませることができます。

 

また、ファミレスにしろファストフードにしろ馴染みのあるところが多く、メニューも味も価格も見当がついていますからリスクがありません。見た目はいいのに味は今一つで、料金はやたら高かったという店には誰も行きたくないでしょう。実質所得が減っている時代、そのような危険は犯したくないのです。

居酒屋やパブに比べて安いというのもチョイ飲みを選択する大きな理由であることは間違いありません。このように見てくると、チョイ飲みという業態はこれまでになかったものです。

 

過去を振り返ると、1、2杯だけ軽く飲むときは安くて便利な立ち飲み屋というシステムがありました。これは酒屋が併設してアルコールやつまみの類を原価で購入し、その場で立ったまま飲むという形態です。

椅子を出すと飲食店としての許可を得る必要があり、そのため古新聞を土間に広げたり、ビールケースを勝手に持ち出したりしてそこに坐って飲むというお客もいました。しかし、来店客は大半が日雇いの肉体労働者で、彼らが少なくなるとともにこの形態は減少します。

 

その後は焼き鳥屋、おでん屋といったいわゆる「赤ちょうちん」が世のオヤジたちの溜まり場となるのですが、馴染みにならないと一人では入りづらく、特に女性が一人で訪れるにはあまりにも敷居が高い存在でした。

その意味では、チョイ飲みは気軽に行くことができます。男女とも単身者が増えているという時代に則した業態であり、そこにリポジショニングした外食店の成功例といえるでしょう。

 

チョイ飲みがもたらす店舗側のメリット

チョイ飲みによるメリットは単に客単価がアップするだけではありません。外食店のピークタイムはランチとディナーです。その間、およびその後は来店客が少なくアイドルタイムと呼んでいますが、往々にしてディナー後のアイドルタイムにチョイ飲み客が期待できるのです。

単身者でも早く帰れば自炊するでしょうが、21時以降の遅い時間ではその気にもなれません。疲れを癒す意味でもゆっくりと飲んで食べ、帰ったら入浴して寝るだけというパターンを望む客が見込めるのです。その意味では、チョイ飲みのライバルは居酒屋や赤ちょうちんといっていいかも知れません。

 

居酒屋に比べると回転が早いというのもチョイ飲みのメリットといえるでしょう。一人、または二人というパターンがチョイ飲みの利用客では一番多い利用形態です。四人、五人では長くなる滞在時間が少人数では短くなり、それにつれて回転率が高くなるわけです。

設備投資はほとんど不要です。従来のままの内装で、ただサイドメニューを少し追加するだけで対応できるのです。それで売上げがアップするとすれば指をくわえて黙って見ているだけではすまないでしょう。

 

ただ、今後を考えると、カウンターしかないファストフード店はチョイ飲み客が離れる可能性があると見る専門家もいます。テーブル席だからこそゆっくり飲んで食事ができるのであって、カウンターでは落ち着くことができず、それよりは持ち帰り弁当を買って自宅で飲んだ方がましだということです。

 

日高屋の1セット1000円戦略

このチョイ飲みを早い時期から取り入れたところがあります。首都圏を中心に駅前などの繁華街に出店している日高屋です。日高屋の前身は来々軒という大衆中華料理店で、これは現在も営業を続けています。日高屋という名のラーメン屋をオープンさせたのは2002年。これは低価格路線を行くもので、現在でも390円で提供しています。

 

なぜ低価格という方針を立てたのか? 

これは、前身である「ラーメン館」の反省から得た教訓です。1994年に立ち上げたこのラーメン屋は全国各地の有名ラーメンを揃え、目新しさも手伝って大ヒットします。しかし、価格は480〜600円と安くはなく、次第にファストフードの安い商品に圧迫されていきます。前述した65円のハンバーガーや280円の牛丼です。

これと同じレベルの価格ならファストフードの客をラーメン屋に取り込めるのではないか。その発想が低価格路線を選択した理由です。もちろん、ラーメンという商品だけで低価格を継続するのは不可能です。そこで、アルコールのパワーに頼りました。餃子(210円)とビール(生の中ジョッキ310円)とラーメン(390円)で合計910円。

 

1000円札でお釣りが来るのですから今の時代には嬉しい存在です。おかげで日高屋の売上は12年連続で記録を塗り替えているそうです。早くからアルコールの単価に目をつけて、それをラーメン屋に取り入れたのですから、経営者のポジショニング能力の高さには驚くべきものがあります。

 

スターバックスのチョイ飲み戦略

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日高をはじめとするファミレス業界、そしてファストフード業界がチョイ飲みに参入し、居酒屋チェーンはどんどん蚕食されているというのが現状ですが、スターバックスのチョイ飲みは少し毛色が変わります。

ご存じのように、スターバックスはセルフ形式のカフェスタイルで、調度は洗練されており、またオープンテラスを併設して女性に人気の高いコーヒー店です。そのスターバックスが提案したのは30〜40代の女性をターゲットとしたチョイ飲みでした。

 

2016年3月、東京・丸の内にあった既存店舗を全面改装してオープンさせたのがスターバックス・イブニングスです。この業態はアメリカ、イギリスでは数百店舗展開していますが、アジアでは初めてです。スターバックスならではの内装で女性好みの雰囲気に満ちており、空間をゆったり取っています。

注目したいのはメニューです。通常のコーヒーをメインとしたもののほか、チョイ飲みのためのアルコールは3種類の瓶ビール、それに赤・白のワインだけです。また、サイドメニューはラタトゥイユとタルトレットだけと実にシンプルです。タルトレットとはタルト風のスイーツで、ワインに合うスイーツとして開発したものだそうですが、男性客にとって物足りない感は否めません。

 

そこには、女性にターゲットを絞った戦略があります。ファミレスやファストフードのチョイ飲みで触れましたが、我が国には女性が一人で飲める店が非常に少ないのです。また、安心して飲める店を探すのも大変です。

その点、スターバックスなら学生時代から利用していたでしょうから安心できます。一人で入店しても気兼ねする必要はありません。軽く一杯飲んでその後に食事という位置づけではなく、飲んだあとは自宅、または他の外食店でという捕らえ方です。

 

ただ、価格が気になります。瓶ビールは800〜850円、グラスワインも850円と他のチョイ飲みに比較して高めです。グラスワイン&タルトレット5種のセットは1200円です。女性は総じて男性に比べて経済感覚がしっかりしています。

そんな彼女たちが果たしてこれだけの金額を支払うだけの魅力があるのかどうか疑問でもないのですが、頻繁ではなくたまに、自分だけの特別な日に利用するというのならうなずけます。徹底してターゲットを絞り込んだリポジショニングの例といっていいでしょう。

 

ターゲットを若い女性に絞ったKFC

同じく女性にターゲットを絞ったチョイ飲みをスタートさせたのがKFC(ケンタッキー・フライド・チキン)です。ただし、スターバックスがいつでもアルコールをオーダーできるのに対して、こちらは17時以降という時間限定です。

それまでの時間帯は以前通りの業態で、17時からバルスタイルに切り替わります。バルというだけあって酒類は豊富に揃え、生ビールやクラフトビール、ハイボール、カクテル、サワー、ワインなどが楽しめます。サイドメニューも女性に人気の高い野菜のほか各種あり、スターバックスとはかなり趣きが異なります。

 

こちらのコンセプトは20〜30代の女性を中心として、バルスタイル1号店の高田馬場店は内装もお洒落です。また、あちこちにコンセントを配することでスマホのバッテリーを気にすることなく、一人でゆったり食べたり飲んだりを満喫できる空間を提供しています。

料金はスターバックスより低く設定しており、若い女性でも抵抗なく入店できるというのが特徴です。

 

立地条件に合わせた業態を選択する

このように書いてくると、KFCもやはり他の業界と同じようにアルコールによる客単価アップ、または夕方以降のアイドルタイムの来客促進を図った作戦のような気がしてきますが、実情は少々異なります。

一般に、チェーン展開する場合、店舗形態やメニューとその調理方法、スタッフの教育などはすべて等質化させます。原材料をはじめとして厨房設備、システムなどのムダを省くためです。しかし、立地条件や地域性によって来店客のニーズは大きく変わる可能性があります。

 

以前はそれでも来店してくれていたお客が、現在の社会情勢では来てくれなくなっていると感じている外食店は多いはずです。その対応として、各店でニーズに合わせた業態を選択するべきだという考え方をするようになったということです。

これには伏線があります。同じKFCでありながら、コーヒーやスイーツの味にこだわったカフェスタイルの店舗や、サラダやパスタ、スープが食べ放題のビュッフェスタイルをすでにオープンさせていたのです。

 

発想はイートインの増加期待

KFCを利用するとき、お客はテイクアウトとイートインのどちらかを選びます。ファストフードではそれが常態なのですが、この記事の冒頭で取り上げた外食・中食・内食という分類で見たとき、テイクアウトは中食、イートインは外食になるのです。

同じ商品であるにもかかわらず、です。中食としての売上をアップさせようとすると商品そのもの、あるいは価格を変えるしかありません。

 

一方、外食であるイートインは店内の雰囲気やサービス形態、メニューの組み合わせによって売上増を図ることは可能です。KFCのバルスタイルが選択したその狙いは当たり、改装後はイートインの売上が1日当たり2・5倍に増えたということです。適切なリポジショニング効果により、縮小を続ける外食産業においても業績を上げることは可能なのです。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

松本 泰二

1978年12月 東京都練馬区生まれ。O型。アイデア創出の支援を専門にアイデア創出戦略家として活動。ほぼ毎日、誰かとブレストをしています^^。ほぼ毎週、起業アイデアを出すワークショップを開催しています。