会社を設立しようとするときに必ず必要となるのが定款です。
事業目的やルール、構成員など基本的なものを会社法の示す通り記載し、法人として登録するものですので、まさに今から設立しようとしている会社の憲法に当ると言えます。
定款作成について自身で取り組み必要事項を調べると、とても大変です。法律について詳しい方でもかなりの時間を要します。詳しくなければ、お手上げの気持ちにもなるかもしれません。
特に今、「夢と希望、そして不安」も抱えて「起業」という一大決心をしたのですから、社長であるあなた自身で定款を作りませんか。
定款は自分の分身
「こんな事に時間を取られている暇がない」 と、ほとんどの方は唯一「会社登記の代理人」となってくれる「司法書士」にお願いしているのが現状です。
しかし、もう一度、考えてみてください。
今やらなければいけないことが山積みなのはよくわかります。夜ベッドの中でも、頭の中は今から始める会社のことで一杯、それこそ寝ても覚めてもの状況でしょう。
司法書士の先生にお願いして全てお任せする。というのも間違いではありません。最後まで一度もお会いすることもなく、電話だけでも作ってくれます。今ではWEBのヒナ型に必要事項を穴埋めするだけでも簡単なものが作れます。
しかしです。
これからの人生で、後何回、会社を設立しますか。
将来会社がどんどん巨大化していき、子会社の設立なんていう日が来るような大成功を収めているかもしれませんが、その時は大きなデスクの前から設立指示を出すだけでしょう。
「熱い情熱」と「凍り付くような不安」の中、一大決心で起業を行うというのは、最初で最後かもしれません。
最終段階の登記時には司法書士の手を借りるのがいいかもしれませんが、我が子とも自身の分身とも言える会社の設立ですから、その基盤となるルールの作成については自分自身で取り組むことが、後になって大きな経験と財産になることは間違いありません。
では、会社定款の作り方と注意点5つを見ていきましょう。
定款の作り方と5つの注意点
1.会社定款とは、
2.定款の作り方
3.定款を作るにあたっての注意点5つ
- 会社定款とは?会社の商号(会社名)、事業内容、本社所在地、構成する社員の名前などを記載したものを言います。
- 初めに少し触れましたが、会社のルールというか、この会社はこういうものであるという会社そのものを文章で示すものです。
- 定款の作り方
- 会社法という法律に乗っ取って作りますので、用語が難しく感じるだけで、理解すると簡単です。
- 作り方としては、司法書士を代理人として作成の依頼をすることもできますし、WEBのヒナ型で作っていくこともできますが、ここでは自分自身で作る事を前提にします。
2-1、「絶対的記載事項」
2-2、「相対的記載事項」
2-3、「任意的記載事項」
とされています。
2-1が「必ず記載しないとダメ」
2-2が「記載しないとダメなのではなく、記載してないことは行ってはいけないこと」
2-3が「前述の二つに該当しないもの」です。
2-1「絶対的記載事項」
a,会社名
b.事業の目的
c.本社所在地
d.資本金
e,発起人の氏名・住所
2-2「相対的記載事項」
これは少し厄介です。
記載していないことは、やってはいけないのですから、現状だけではなく、これから事業が進むにあたって展開していく可能性も考えなければなりません。
代表的なものには、
現物出資=金銭以外の財産による出資。(不動産が思い浮かびますが、車・有価証券・機械設備・コピー機や特許権など他にも様々なもの)
株式の譲渡制限=制限を設けないと、突然知らない株主が現れ、経営が脅かされます。
取締役の任期=通常2年ですが、10年まで延長することができます。
他にもありますが、これらにつきましては、法律に照らし合わせて不備なきようしっかりと調べましょう。
2-3、「任意的記載事項」
こちらは記載しなくても定款には問題ありませんし、記載していないからやってはいけないというものでもありません。
それでは何故記載するのかというと、定款という会社の憲法の中に置くことで、その重要度を増し、拘束する力を高めるためのものです。
事業年度などもその一つになります。
3、定款を作成するに当たっての注意点を5つ
3-1会社名について
名付けですから思い入れもあることですが、少しだけ決まりがあります。同一所在地に同じ名前の会社はないか。その名前が「商標登録」されていないか。有名企業と同名ではないか。
3-2許認可事業について
事業の目的として事業内容を記載しますが、その記載された事業内容のみを行うことができます。
逆に言うと、記載されていない事業を行うことは出来ませんので、現状だけではなく、将来的に展開していくだろう事項も加えるべきです。
特にそれが許認可事業であれば、記載がなければ許認可自体が下りません。
記載しているからと言って、行わなければならないという訳ではありませんので、業務上、今後の進出が見込める可能性も想定して考える必要があります。
3-3株券の発行の有無
会社法では、株券を発行しないことを原則としています。
旧商法では、株式会社においては株券を発行することが原則とされていましたが、平成16年商法改正で「株券不発行制度」が導入されました。
これにより定款に定めが無い限り、株券は発行されないことになりました。
今後のことも考えて、株券の発行を行うのであれば、定款の中に「当会社の株式については株券を発行する」ということを記載する必要があります。
3-4定款の変更について
定款は当然ですが、会社の設立の前に作ります。将来的な展望も考え、様々な状況を想定して作っていきますが、事業は生き物です。
想定外のこともたくさん出てきます。本社所在地も変わることがあります。そのような折に、定款は変更も自由に行えます。
会社設立時に作成された定款を「原資定款」と言いますが、株主総会で定款の変更を行うこ とが出来ます。
ただし定款の変更には3~6万円と資金も掛かりますし、何度も会社の法律がコロコロ変われば、お取引先やお客様、社員にも不審感を与えてしまうでしょう。
原資定款を充分に検討の上、作成することが大切です。
3-5定款に書かれていない事業を行った場合
定款に書かれていない事業は行うことはできませんが、先ほども述べました様に、事業は生き物です。様々に変化もしていく事だと思います。そんな状況で定款に書かれていない事業を行ったとすれば、特に罰則の規定があるという訳ではないのですが、違反であることは間違いありませんので、定款を作る段階で事業内容を記載した後に、
「附帯関連する一切の事業」と入れておくのが良いでしょう。
まとめ
会社を運営していく上で非常に重要なものですから、不備があると困りますので、やはり最後は専門家である司法書士の助言をいただくべきですが、夢と希望を掲げ、一大決心の元に起ち上げる会社です。
その基盤である会社の法律を作るのですから、すべてを他人任せにするのではなく、自身で考え、将来的なことも想定した上で0から造っていくことが大切ですし、絶対に得難い勉強です。
極端に言えば、起ち上げる会社の名前までも「何でもいいや」と、人任せにしてしまう方が、起業という産みの苦しみに耐えられるのでしょうか。
会社設立のスタートにおいて、会社の法律を熟知し、その法律を自分自身で築き上げていく意気込みこそが一番重要なことだと言えます。
定款の作成はまだ事業のスタートでもありません。
しかし、スタートするために絶対に作らなければならないのです。会社の設立は、生涯に何度も経験するものではありません。
それ以前に、会社の設立や、それに関わることなどは、ごく一部の方だけが経験できるのです。だからこそ、この機会に充分に勉強し充分に体験することは、得難い財産になります。
その経験値が会社そのもののプラスになることも間違いありません。「自分たちの法律を造る」という経験を楽しみましょう。