From:松本泰二
事業を継続的に成功させていくためには、顧客との関係造りがとても大切です。自らの製品を最初に世に出す時には、 実際に製品を送り出してマーケットからのフィードバックを受けるまでは、それがどのように受け止められるか全くわからないのです。
世に出した途端にヒットする商品などほとんどありません。お客様からの反応に応じて、改良に改良を重ねてやっと世の中に受け入れられる商品になります。そのため、お客様からのフィードバックを集めることは絶対に不可欠です。
フィードバックを集める
フィードバックを集める方法としてはソーシャルメディアを活用するという方法も有効です。いまやソーシャルメディアは個人間の親しい間柄でのやり取りだけでなく、ある製品やサービスについての情報のやり取の場ともなっています。そのため効果的にソーシャルメディアを活用することにより、より多くの有益なフィードバックを収集することが出来ます。
具体的な方法としてはソーシャルメディアのアカウントを作り、自社の製品や社名についての投稿がないか検索することが出来ます。また他には、口コミサイトなどに自社に対する顧客の書き込みがないかを調べることでもフィードバックを得ることが出来ます。
ソーシャルメディアの活用方法としては、店舗がアンケート箱を設置するように、顧客が自社と接する場面すべてに用意したアンケートリンクを貼るなどもあります。このアンケートリンクは メルマガなどにも貼っておくことが出来ます。この時のアンケートは、アンケートフォームにしておくと顧客も解凍しやすく、またフィードバックの収集と分析が容易になります。
アンケートの内容は明確で具体的なものにするべきです。例えば、サービスのスピードは適切だったか、カスタマーサポートの対応は礼儀正しかったかなど、顧客が深く考えずにすぐ答えることが出来るものにすると回答率が上がります。
また具体的に分類できるので、有効なフィードバックを得ることが出来ます。アンケートに答えてくださったお客様には得点を用意するなど、感謝の気持ちを伝えるなら、お客様がアンケートに応じてくださる機会が増えます。
さらにソーシャルメディアなどを活用して、顧客のフラストレーションに早めに対処するなら、顧客の不満が高まって、その不満をオンライン上で表現するといった事態を未然に避けることも出来ます。
またアンケートを実施することにより、自社の製品やサービスを支持してくださっている顧客とのつながりを造り 、定期的に交流をもつための基盤を据えることができます。こうしたロイヤリティの高いお客は、自社の製品やサービスの向上や発展のために貴重な意見をくださることが多いので、大切にするべき存在です。
またそうしたお客様とのつながりを大切にすることにより、自社の発展に大いに役立つ情報を得ることが出来る共に、自社の製品やサービスを支持してくださっているお得意様への自社の深い関心を示すこともできるでしょう。リピート客には、お得意様限定の特典を用意するなども顧客を引き止めるために役立ちます。
クレームも製品やサービスなどの正直な声を聞く
フィードバックという点ではクレームもお客様の製品やサービスなどへの正直な声を聞くことの出来る大切な機会です。適切に対応するなら、自社のファンになってくださるお客様もいらっしゃいます。自社の製品を購入してくださったということは、その製品やサービスに大きな期待をかけてくださっていたということです。
最初から悪意のあるクレームをしようと思って来られるお客様はほとんどいらっしゃいません。クレームにはいくつかのケースがあります 悪意を持って行われるクレーム以外では、まず自社の不備な点について気付いた事実を指摘するクレーム、さらに当然受けられるべきサービスを受けられなかったために感情害されたというクレーム、過度の期待をされていて、それが満たされなかったため 感情を害されているケースなどです。
クレームに至った状況などについて、詳しくお客様から話をしていただくなら、自社のサービスや製品の問題点、解決のために行うべきことなどにも気づくことができます。
お客様からクレームを受けた時に避けるべきは、「謝罪しない」という態度、また「そうですが、でも~」といった逆説の言葉を使うことも「共感しない」気持ちが伝わるので、こうしたことも避けるべきです。
お客様の立場に立って、お客様の気持ちを理解するように努め、悪いと思う点は素直に認め、お客様が憂慮されている点には、心配する気持ちをしっかりとお伝えすることが大切です。不信感を持っておられるお客様には、信頼を取り戻せるような対応することが必要です。決して焦らずに、お客様のためにできることを決して面倒だとは思わずに行うことによって、お客様の気持ち鎮めることが出来ます。
クレームはお客様の正直なご意見をお聞きすることができる貴重な機会だと捉え、丁寧に対応するならお店に大きなメリットを与えるチャンスともなります。
起業する際に、意外に見落としがちなのが最初の顧客を集めること
起業する際に、資金や商品をそろえたり、アイデアやプランを立てることも大切ですが、意外に見落としがちなのが、最初の顧客を集めることです。起業すると、最初のお客様に商品やサービスを購入していただくまでことがまず第一の目標になるでしょう。
最初に用意しておいた資金は、あっという間にそこを突きます。最初の半年は、最初の顧客100人を獲得するために、お金を儲けるより、使う時期だと心得ましょう。起業をした人のほとんどが苦労するのが、この最初の顧客を集めることであると言われています。
あなたの会社の製品やサービスを知ってもらうために、無料で体験してもらうような機会を提供することも出来るかもしれません。最初の100人の顧客を作ることができるなら、そのお客様が製品についてフィードバックをくださったり、あなたの会社の商品を他の人に勧めてくださったりして製品が広がっていきます。この最初のお客様は大切にしましょう。
最初の顧客の作り方ですが、人脈を広げるための活動をするとき、まずは相手にあなたの会社を好きになってもらうことが有効です。そのために自分の会社を好きになってもらえるようなストーリーを相手に伝えられるようにしましょう。また最初の100人の顧客ができるまでには、出来るだけ多くの人と会話するが大切です。電話でも良いので出来るだけ多くの人と話をしましょう。
また顧客になりそうな人を紹介してもらえないか、積極的に友人や知人に尋ねてみましょう。新たに独立する際には、独立前からの人間関係やネットワークを大切にしましょう。
手当たり次第人脈を広げようとするのではなく、「自社の顧客になってくださる可能性があるのはどんな相手だろうか?」ということについての仮説を立て、そうした相手が見定まったならメールを送るなどして接触する機会を探りましょう。
自社の関係する技術の勉強会や交流会に参加することは有効です。そうした勉強会には、最新技術などに関心の深い、勉強熱心な起業家などが参加していることが多いので、こうした人たちとつながりを持つことが出来、とても役立ちます。またこうした勉強会の主催者は、自身が経営者などである場合が多いため、先輩の起業家などから良いアドバイスを得ることもできるかもしれません。
一方、異業種交流会は目的のバラバラな集まりになると、あとあとにつながる人脈を築くことが出来ないかもしれませんし、100名を超えると、ただの名刺交換に終わってしまいことが多いのであまり有効だとは言えません。人脈を増やすための取り組むもただやみくもに行なえば良いというものではありません。
アポイントに応じてくださり、話す機会を持つことができた相手については、事前に必ず調査しておきましょう。そして実際に会った時に、事前に調査用意しておいた話題をきっかけに、相手が興味を持ちそうな点について話すなら、お互いの間の共通点をたくさん見つけることが出来、短い時間の対話でも、後あとに続く有益な関係を築くことができる可能性が高くなります。
名刺を交換した後には、相手にメールアドレスを登録する手間を省かせるため、必ず自分から先にメールを送りましょう。そうすると名刺交換どまりになってしまう可能性を低くできます。顧客になってくれそうな人と会う時には常に相手に役に立つようなものを提供できるように準備をしておく事が大切です。「この人とつながっていると何か役に立ちそうだ」と思ってもらうなら、その後も関係を維持していくことができるでしょう。
ソーシャルメディアやホームページ使った顧客の収集も効果的です。使える手段はすべて使い、より多くの人にあなたの会社の存在に気付いてもらえるようにしましょう。そうして入口を通してのちのちにつながる関係を作り出せるよう、有益な情報を提供するメールマガジンの配信をするなどして、見込み客のメールリストを獲得できるようにしましょう。
ビジネスにおいての基盤は、相手とあなた双方に利益がもたらされるということです。あなたが提供するものによって、相手に利益が生まれるなら、そこにビジネスが発生します。そのため、最初の顧客を集める際にも、常に相手に利益を与えられることを最優先して考えましょう。
事業を長く続けるために、顧客の分散も重要な事項です。
売上の大部分を占めている顧客から、条件の悪い仕事を求められたり、発注を切られた場合に行き詰ってしまわないためです。販売先の移転や、取引先が仕入方針を転換したり、自然災害や事故による影響が無いとは限りません。また、ひとつの取引先に依存しすぎると、新しい取引先を確保する努力を怠ってしまう危険性があります。
理想としては一つの会社からの売り上げは、総売上の5%未満であることが望ましいでしょう。最高でも30%を超えてしまうと、取引をしている相手側に何かが起こった場合に、影響を受けて共倒れになってしまう危険があります。
近江商人の有名な商売の行動原理
近江商人の有名な商売の行動原理として、三方よしという言葉があります。(近江商人とはおもに鎌倉時代から、江戸時代~昭和時代にかけて活躍した近江の国(滋賀県)出身の商人を指します。この近江商人は、大阪商人、伊勢商人と並ぶ、日本三大商人の一つです)。
これは、「売り手良し、買い手良し、世間良し」という商売の仕組みを指します。不況や自然災害の中でも、長く続いてきた商人の商売成功の秘訣を伝えるものですが、この近江商人の商売の原理を適用することは、現在にも有効であると思われます。以下に近江商人の商売10訓をあげてみます。今の時代にも当てはまるようなものもあるのではないでしょうか?
①商売は世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり
②店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何
③売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる
④資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし
⑤無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ
⑥良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり
⑦紙一枚でも景品はお客を喜ばせる、つけてあげるもののないとき笑顔を景品にせよ
⑧正札を守れ、値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ
⑨今日の損益を常に考えよ、今日の損益を明らかにしないでは、寝につかぬ習慣にせよ
⑩商売には好況、不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ
いかがでしょうか?顧客との関係づくりや商品の開発など幅広く適用できる考え方を学ぶことが出来るのではないでしょうか?
この三方よしの原則は、取引先との関係にも当てはまります。
例えば、安い値段で業者から製品を買いたたいてお客様に低価格で提供しても、長い目で見れば市場の成長を妨げ、製品の価値を下げることになるので、本当にお客様のためになるとは言えません。売る側、買う側、そしてマーケット全体の成長を促すのは、良い商品を、適切な値段できちんと取引するということです。
こうしたどの側においても、利用されたり、不利益を被ったりする立場を造らないというマーケットの仕組みのみが、持続する成長を促すと言えるでしょう。
また理不尽な要求をする取引先がいる場合、相手側の理不尽を聞き入れることが長くなると、その状態が当たり前になってしまうことがあります。自社にとって不利益な譲歩を続けることは、後に続く取引をする他の会社にとっても、あなたにとっても何のメリットもないので、取引をやめる方が賢明な場合もあります。ただ取引を停止する際のやり方には注意しましょう。
実行するのは、大きな覚悟がいるので直接おすすめすることはできませんが、「嫌な取引先は切って良い」の著者である、群馬県のばね製造業の「中里スプリング製作所」では、社員に対して、理不尽な要求をする取引先だと思ったら、自由に取引を切って良い権限を与えています。ただし、取引先を切った場合は、社長自らが10社の新規開拓を行うことを自らに義務付けていると言います。
確かに、理不尽な相手とやり取りをしなければならないと思うと、仕事のモチベーションもさがります。すべてにおいてマイナスの面しか生みません。理不尽な取引をする会社のやり方を容認していることにもなります。決定は自由ですが、理不尽な取引先に向けていたエネルギーを、まっとうな取引をしてくれる相手先に傾けた方が、自社のためにも社会のためにもなります。
取引先との真に理想的な関係とは、信頼してもらい、相談してもらえる関係です。そうした関係は、ただひたすら相手の要求を聞き入れ、自分たちにとって不利益な事柄でも、譲歩し続けることによっては生まれません。そうではないでしょうか?それでは、信頼関係ではなく、ただ利用しやすい、というだけの存在になってしまいます。
どのようなアフターサービスを行うか
顧客との関係性に関しても、売る前よりも商品やサービスを売った後に、どのようなアフターサービスを行うかということはとても重要です。売上の8割はリピーターである顧客がもたらすものと言われています。このリピーターになってくださっているお客様を大切にすることは会社の継続的な発展にとても大切な事柄です。
米国の平均企業は5年間で顧客の半分を失っていると言われています。日本の企業での状況も同様です。こうした顧客維持率が低いことは、収益に大きな影響を与えます。また、競争の激しいマーケットの中では、顧客の奪い合いが激しくなり、顧客の維持はますます難しくなっていきます。ロイヤリティの高い顧客を一人失うことは大きな痛手になります。
お客様の側からすると、あなたの会社の提供するサービスを離れて、他の会社のサービスや製品に乗り換えることは、とても簡単なことです。ですから、あなたは顧客となってくださっているお客様のうちに、自社へのロイヤリティの構築を行うために行動を取らなければなりません。
そうしたロイヤリティはどのように育つのでしょうか?
それは、自分がお客様の立場に立って考えてみると、分かりやすいのではないでしょうか?あなたがある会社のサービスや製品に対してロイヤリティを感じる時とは、どんな時でしょうか?それは、その会社の製品やサービスに対するアフターフォローがしっかりしていたり、あなたがその会社を利用したことへの感謝の気持ちを受け取ったときなどではないでしょうか?
そうした点をきちんとしてくれる会社であれば、お客様も同じ誠実な態度で支持したいという願いを持って下さりやすいと思われます。
一人のお客様が3人のお客様が、あなたの会社の製品やサービスに関する口コミをしてくださるとしたら、100人のロイヤリティの高いお客様は、300人の顧客を引き寄せてくださるということです。こうしたお客様を大切にしましょう。お客様が常に、あなたの側の誠実さや、礼儀正しさを感じられるように心がけましょう。
気を付けるべきは、一人の良い評価をしてくださるお客様が、そのことを3人に伝えるとしたら、あなたの会社から悪い印象を受けた一人のお客様は、そのことを10人に口コミで伝えるであろうということです。そうすると、あなたが失うことになる損害は甚大なものとなります。
どのように、お客様のロイヤリティを構築したらよいのだろうか?と思うかもしれませんが、それはとてもシンプルなことです。あなたが、お客様を自分の大切な知り合いであいであるかのようにして扱い、大切な知り合いに対してするように、お客様に対してするなら、お客様にはそのことが必ず伝わります。
同様に、あなたがお客様を粗雑に扱い、見えていないところで悪口を言ったり、粗雑なものを提供したりするなら、そのことも必ずお客様には伝わります。あなたがお客様の立場であるならば、そうした扱いを受けた店にもう一度行きたいと感じるでしょうか?
むしろ、そのことを知ったら、二度と行きたいと感じないのではないでしょうか?お客様に行う事は、お客様に見えないところで行うにしても、見えるところで行うにしても、すべてお客さまに伝わっていると考えるべきです。お客様は、数あるサービスの中から、あなたの会社を選んで、お金を払って利用してくださっています。
そうしたお客様を粗雑に扱う事は、一種の裏切り行為であり、不誠実な態度です。どのお客様に対しても、誠実な態度を、裏でも表でも保ち、お客様の信頼を裏切ることの無いようにしましょう。
ウォルトディズニーのリピート率は90%以上
例えば、ウォルトディズニーのリピート率は90%以上だそうです。どの様な工夫が、このようなリピートの高い顧客を生み出しでいるのでしょうか?
ウォルトディズニーでは、「顧客」という言葉を使わず、お客様をすべて「ゲスト(GEST)」と呼んでいるそうです。どのお客様も一人ひとりが大切な、自分たちの「ゲスト」であるという意識を徹底しています。それは、表からは見えない裏方においても貫かれています。従業員同士でも、仲間が良い気分で働くことが出来るようにということを意識しています。
こうした誠実な態度が、どんな場面においても、「あ、本当はこんな風に思っていたんだ」とお客様をがっかりさせたりしない、徹頭徹尾、お客様をおもてなしたい、喜ばせたいというサービスの精神が貫かれているのです。
自社の製品を選び続けていただくために
市場が成熟していく中で、自社の製品を選び続けていただくためには、真剣な努力と行動を払わなければなりません。行動で現れた誠実さこそが、顧客のあなたの会社の製品やサービスへのロイヤリティを保たせてくれます。常に顧客を喜ばせる視点で取れる行動は無いか、どのように顧客の声を集めて、その声に基づいて製品やサービスをブラッシュアップしていくことが出来るだろうか?
ということを、リストアップし、考え付いたすべてのアイデアを是非実行してください。こうした実際に取られた行動だけが、お客様の視線をとらえ、その裏に存在する、あなたの会社の顧客への深い関心を伝えるものとなるのです。
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